小中一貫教育を実施する「義務教育学校」が来年スタート 利点と課題は?

国会で改正学校教育法が成立し、2016(平成28)年度から小中一貫教育を実施する「義務教育学校」が創設されることになりました。市区町村教育委員会などの判断で、既存の小中学校などを義務教育学校にできるようになります。これから設置が増えると予想されますが、そのメリットと課題とは何でしょうか。

義務教育学校は、新しい学校の種類として法律に明記されますが、独自の教員免許や学習指導要領は設けられず、小中学校の教員免許や、学習指導要領を活用することになります。ただし、9年間一貫教育の学校として、現在「6・3制」となっている小学校と中学校の学年の区切りは、学校が柔軟に決めるようになり、「4・3・2制」や「5・4制」などの多様な区切りも可能になります。これによって、子どものつまずきの大きな原因の一つである、「中1ギャップ」の解消が期待されます。また、中学校の内容を小学校段階で先取りしたり、教育内容の実施学年を入れ替えたりすることも可能になる予定です。詳しい内容は今後、文科省が決めることになっています。

具体的には、義務教育学校は前期課程(小学校段階)と後期課程(中学校段階)に分かれます。学校の形態は、前期課程と後期課程が同じ校舎にある「施設一体型」、前期課程と後期課程などの校舎が別々の場所にある「施設分離型」の2タイプになります。新設校として新しく設置するなら施設一体型、既存の小中学校の施設を活用・転換するなら施設分離型となることが予想されます。ただ、施設分離型の場合でも一つの学校ですので、校長は1人だけとなります。別々に校長がいる小学校と中学校が一貫教育に近い取り組みをしたとしても、それは「小中連携教育」であり「小中一貫教育」にはなりません。また、教員は小学校と中学校両方の免許状を持っていることが必要ですが、当分の間は、どちらか一方の免許状だけでよいとする暫定措置が取られます。
文部科学省の調べによると、現在、小中一貫教育は市区町村などが独自に行っており、全国1,743市区町村で1,130件(2014<平成26>年5月現在)があります。これらのほとんどが「中1ギャップ」解消などに成果があったと小中一貫教育を高く評価しています。

しかし、懸念されることもあります。その一つが、学校統廃合のために安易に利用されることです。実際、複数の小学校を統廃合するに当たり、保護者や地域住民を説得するため、小中一貫教育の導入を掲げるケースは少なくないようです。このため義務教育学校の制度化は、学校統廃合に拍車を掛ける恐れがあるともいえます。市区町村教委による義務教育学校設置に際しては、きちんとした小中一貫教育のカリキュラムを用意しているか、保護者や地域住民の理解が得られているか、などがポイントになりそうです。また、ほかの小中学校との間で、学校間格差が生じたりしないような配慮も必要となるでしょう。

今後、義務教育学校が増えることは確実でしょう。それが地域の在り方や子どもたちの教育にどんな影響を及ぼすのかが、注目されるところです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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