今、子どもたちはどんな本を読んでいる? 「朝の読書」の実態

子どもにできるだけ多く本を読んでもらいたい、読書の習慣を身に付けさせたいと思っている保護者は多いでしょう。でも、どんな本を読ませたらよいか選択に迷うことも少なくないのではないでしょうか。学校における「朝の読書」運動を推進している朝の読書推進協議会は、2014(平成26)年度に朝の読書で子どもたちに読まれた本の調査結果(外部のPDFにリンク)をまとめました。子どものための本選びの参考にしてみてはいかがでしょう。

「朝の読書」は、学校で授業が始まる前の朝の時間を利用して、10分間程度、子どもと教員が一緒に読書をするという活動です。漫画や雑誌以外の本なら何を読んでも自由(学習漫画は可)、感想文を書かせることもしないという緩やかな活動ですが、読書習慣が身に付くだけでなく、読書で心身を落ち着かせることで授業への集中力が上がり、問題行動も減少するなどの効果も指摘されています。同協議会によると、全国の小中学校の8割以上、高校でも4割以上が導入しているそうです。2014(平成26)年度に「朝の読書」で読まれたベスト5は、次のとおりです。

●小学校
 (1)「かいけつゾロリ」
 (2)「科学漫画サバイバルシリーズ」
 (3)「学研まんが新ひみつシリーズ」
 (4)「怪談レストラン」「しずくちゃん」「一期一会」
 (5)「冒険!発見!大迷路」

●中学校
 (1)「空想科学読本」
 (2)「図書館戦争シリーズ」「『ぼくら』シリーズ」「カゲロウデイズ」
 (3)「謎解きはディナーのあとで」
 (4)「ハリー・ポッター」
 (5)「ソードアート・オンライン」

●高校
 (1)「図書館戦争シリーズ」
 (2)「ソードアート・オンライン」「村上海賊の娘」「永遠の0」
 (3)「カゲロウデイズ」
 (4)「レインツリーの国 World of delight」
 (5)「探偵ガリレオシリーズ」

小学校では「かいけつゾロリ」など昔からの人気シリーズや学習漫画などが上位を占めていますが、今回は「ディズニーアニメ小説版シリーズ」が9位に入っています。「アナと雪の女王」の人気によるものでしょうか。また中学校では、「ソードアート・オンライン」などアニメの原作になったライトノベルが人気を集めているほか、高校になるとライトノベルのほかにも「村上海賊の娘」「永遠の0」などのベストセラー小説も入ってきます。小説家では有川浩氏(図書館戦争シリーズほか)、東野圭吾氏(探偵ガリレオシリーズ)などが中高校生の人気を集めているようです。

ところで、思考力や表現力を高めるためにも読書は欠かせず、文部科学省などは2012(平成24)年度から「学校図書館図書整備5か年計画」として毎年度200億円を学校図書館の蔵書整備のために予算化しています。しかし同協議会の調査(外部のPDFにリンク)によると、学校図書館の蔵書について「十分」としている学校は23.9%に過ぎず、41.6%の学校が「不足している」と答えています。学校図書館整備予算は、自治体が自由に使える地方交付税の中で措置されているため、実際には学校に予算を回していない自治体が少なくないと言われています。子どもたちが読書習慣を身に付け、充実した学習活動ができるようにするためにも、学校図書館の充実が求められるところです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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