文科省が理工系人材育成に本格着手 期待される「四つの活躍」

景気が回復基調を見せていることを受けて、今春の大学入試では文系学部の人気が盛り返しているようです。しかし、これからの時代において理工系人材の育成が急務であることに変わりはありません。このため文部科学省は、2020(平成32)年度末までに進めるべき取り組みなどを示した「理工系人材育成戦略」をまとめました。注目されるのは、産業界での需要・雇用にマッチした人材の育成を掲げ、理工系人材のイメージの転換を図ろうとしていることです。

長引く就職難により、大学入試では最近まで理工系に人気が集まっているといわれていました。しかし文科省によると、実際の大学生全体に占める理工系学部学生の割合は1997(平成9)年度ごろから減少を続け、2013(同25)年度には21.6%にまで低下しています。また、理工系人材というと、白衣の研究者や機械に囲まれた技術者などをイメージしがちですが、現在ではサービス業などに就職する者も多く進路も多様化しています。一方、大学などの理工系教育では依然として研究者や技術者の育成が中心で、産業界などのニーズとのミスマッチが拡大しているともいわれています。このようななかで文科省は、「付加価値の高い理工系人材は、欠くことのできない存在である」として、2020(同32)年度末を当面の目標とし、理工系人材の質的充実と量的確保に乗り出しました。

ポイントの一つは、「理工系人材に期待される四つの活躍」として、「新しい価値の創造及び技術革新(イノベーション)」「起業、新規事業化」「産業基盤を支える技術の維持発展」「第三次産業を含む多様な業界での力量発揮」を設定し、より高度な能力を求めていることです。少子高齢化・人口減少・グローバル化などの課題に直面する日本の社会において、多様な理工系人材を育成し、幅広い活躍を期待していることがうかがえます。研究者・技術者からベンチャー起業家や各種産業のリーダー的存在へと、理工系人材のイメージはこれから大きく変わるかもしれません。

もう一つのポイントは、理工系人材の育成と人材需要・雇用のミスマッチを防止するため、産業界のトップと大学関係者らによる「理工系人材育成--産学官円卓会議」(仮称)を設置することです。人材育成の時点から産業界と連携して、より円滑にこれからの社会の戦力となる理工系人材を生み出していくことがねらいです。

このほか、大学や大学院の改革以外の方策としては、小学校から高校までの段階で「主体的・協働的な学び(アクティブ・ラーニング)の促進、観察・実験環境の充実」や理工系の「意欲・能力のある児童生徒の発掘、その才能を伸ばす取組」などが挙げられています。次期学習指導要領の改訂では、アクティブ・ラーニングの導入が大きな課題となっていますが、「付加価値の高い理工系人材」の育成という目的も含まれているようです。

今後、人材育成の改革によって、理工系人材の進路や企業などにおける処遇などが、どう変化していくのかが注目されるところです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

子育て・教育Q&A