てんとう虫がパートナー! 日本の農業で大活躍

化学物質はもう必要ないかもしれません。農薬は安定した収穫高を保つためには欠かせないものですが、人体や環境への負荷がかかります。そのため、人間の健康志向の高まりは、農薬を使わない有機野菜の需要を高めましたが、肝心の有機野菜は栽培が難しく、高価です。しかし、驚くべきことに、この状況を小さくてかわいらしいてんとう虫が変えてくれるかもしれません。

 

「生物農薬」という言葉を知っていますか?

 害虫を駆除するために農薬の代わりに使う生物をこう呼びます。たとえば、てんとう虫は作物の汁を吸う害虫のアブラムシを食べてくれる益虫(えきちゅう)です。しかし、空を飛ぶ自由を持つてんとう虫は一カ所にあまりとどまりません。このままではてんとう虫を畑に離しても、農薬の代わりとして使うほどには害虫駆除効果はあがらないでしょう。では飛ばないてんとう虫がいたとしたら? 畑にとどまってアブラムシを食べてくれるに違いありません。実はすでに飛べないてんとう虫を作る技術が日本で確立されています。

 

 農業・食品産業技術総合研究機構が開発した飛べないてんとう虫は、品種改良という伝統的な方法で生まれました。飛ぶ力が弱いてんとう虫を選別して何世代も掛け合わせ続けることで、飛ばないてんとう虫を生み出したのです。製品として売りだされているこのてんとう虫は、次世代も飛ばないままのてんとう虫となっているため、離した畑に長く住み着いてくれます。

 

 ほかにも飛べないてんとう虫を生み出す技術が日本にはあります。名古屋大学が開発したのは、羽を作るために必要なタンパク質を作れなくする方法です。本来のRNAを人工的なRNAで置き換えることで、タンパク質精製をつかさどる遺伝子の発現を抑制しているのです。DNAを組み替えるわけではないので、次世代には飛べるてんとう虫も生まれます。世代交代して、もとの自由さを取り戻すところは、少してんとう虫にやさしいかもしれません。

 

 

高校生が考えた新手法

 掛け合わせや遺伝子…非常に難しい技術が必要のように思えますが、てんとう虫を傷つけず、環境に影響を与えない方法もあります。それは、あとではがすことのできる接着剤で羽をとめておくというもの。この方法を開発したのはなんと高校生!唯一の難点は手間がかかることですが、効率的につける装置も開発中です。

 

 人間の都合にてんとう虫をあわせるようで、少し気がひける気もします。ですが、てんとう虫に力を貸してもらうという考え方もできるはず。未来の農業には、小さな虫たちの助けが必須になるかもしれませんね。

 

 

参考:

Vestigial and scalloped in the ladybird beetle: a conserved function in wing development and a novel function in pupal ecdysis 

T. Ohde, M. Masumoto, M. Morita-Miwa, H. Matsuura, H. Yoshioka, T. Yaginuma and T. Niimi  

Insect Molecular Biology Volume 18, Issue 5, pages 571–581, October 2009

 

兵庫県立農林水産技術総合センター(http://hyogo-nourinsuisangc.jp/)


みんなDE笑顔プロジェクト 千葉県立成田西陵高等学校 地域生物研究部ブログ(http://www.egao-p.com/blog/list/theme/t/531)

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