幼児のぜんそくやアトピーが減少 小学校で耳疾患は過去最高に

アトピーやぜんそくなど子どもの病気は保護者にとって大きな悩みの一つです。ただ全国的に見ると、アトピー性皮膚炎のある子どもは幼稚園で過去最低となり、ぜんそくのある子どもも幼稚園や小学校では3年連続して減っていることが、文部科学省の2014(平成26)年度「学校保健統計調査」(速報)でわかりました。一方、中耳炎などの耳疾患が小学校と中学校で過去最高となるなど新たな課題も浮上しています。

調査は2014(平成26)年4~6月、国公私立の幼稚園(5歳児のみ)から高校を対象に、身長や体重などの発育状態は約70万人(全体の5%)、疾病などの異常は約334万人(同24%)を抽出して調べました。それによると、平均身長は幼稚園男子が110.3センチ、同女子が109.5センチ、高3男子が170.7センチ、同女子が157.9センチで、2001(平成13)年度ごろをピークに横ばい傾向を続けています。

また平均体重は幼稚園男子が18.9キロ、同女子が18.5キロ、高3男子が62.6キロ、同女子が52.9キロで、2006(平成18)年度ごろをピークに減少傾向となっています。同様に、肥満度20%以上の「肥満傾向児」の割合は、男子の小6・中1・高1~3で10%を少し超えるものの、あとは10%未満で、2011(平成23)年度以降横ばいで推移しています。現在の子どもたちの「スリム化」はほぼ定着したようです。

アトピー性皮膚炎がある子どもの割合は、幼稚園が2.37%で過去最低となりました。ただし、小学校は3.22%、中学校は2.52%、高校は2.14%とほぼ横ばいです。ぜんそくのある子どもの割合は、幼稚園が1.85%、小学校が3.88%でいずれも3年連続で減少、中学校も3.03%で前年度より減少しましたが、高校は1.93%で横ばいとなっています。一方、増加傾向を示しているのが中耳炎や内耳炎などの耳疾患で、小学校は5.70%、中学校は4.00%とそれぞれ過去最高を記録しました。耳疾患は気が付きにくい場所なので、保護者も注意する必要があるでしょう。

「裸眼視力1.0未満」の子どもは、幼稚園が26.53%(前年度比2.00ポイント増)、小学校が30.16%(同0.36ポイント減)、中学校が53.04%(同0.25ポイント増)、高校が62.89%(同2.95ポイント減)となっており、幼稚園での増加が気になります。さらに、眼鏡などを使用していない視力非矯正者で「視力0.7未満」の子どもの割合は、小学校から高校では減少または横ばいであるのに対して、幼稚園では増加傾向にあり「0.7未満0.3以上」が7.42%(同2.1ポイント増)、「0.3未満」が0.81%(同0.29ポイント増)となっています。子どもの学習状況など気になることがあれば、まず近視を疑う必要があるかもしれません。

このほか、「むし歯」(治療済みを含む)のある子どもは、幼稚園38.46%、小学校52.54%、中学校42.37%、高校53.08%で、いずれも減少傾向にあります。さらに、むし歯があるにもかかわらず治療していない「未処置歯」がある子どもの割合は幼稚園22.78%、小学校26.30%、中学校18.54%、高校22.63%で、いずれも1948(昭和23)年度の調査開始以降、最低を記録しました。保護者の予防・治療意識が高まった成果と言えるでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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