子どもと取り組む片付けのコツ【第3回】年齢別の片付け法

ライフオーガナイザーの鈴木尚子さんに、親子で取り組む片付けのポイントについて伺います。今回は、年齢に応じた片付けのポイント、子どもが片付けから学ぶことについて取り上げます。



片付けは、何歳からでも身に付く!

「片付けは、何歳までにできるようになっているべきですか?」とよく聞かれますが、「何歳からでも大丈夫です!」と自信を持って答えています。実は私自身、片付けが非常に苦手で、片付けられるようになったのは30歳過ぎ、今も母や祖母に「あなたがその仕事をねえ……」と、しみじみと言われるほどですから(笑)。ただし、片付けはできるだけ早めに習慣化されているほど、楽に身に付くのも事実です。

◆就学前 : 「きれい」の感覚を身に付ける
意思の疎通ができ、物をつかんだり離したりできるようになる1歳半頃が、片付けのスタート地点といえます。「使ったおもちゃをナイナイしようね」と、箱におもちゃを1つ、ぽとんと投げ込んでもらう。それが片付けの第一歩になります。3歳くらいまでは保護者がお手本を見せて、一緒に片付けてあげてください。1つでも片付けられたら「よくできたね!」「えらいね!」と声をかけてあげましょう。片付くと気持ちがよい!という感覚を、この時期に覚えられえるとよいですね。

◆就学前後~小学校 : 「自分のことは自分で」を目指して
少しずつ、自分の身の回りのことができるようになっていく時期。翌日の時間割に合わせて教科書やノートをそろえることも、自分でできるようになっていきます。同時に、家の中でも自分のスペースは自分で管理できるよう、前回紹介した3つのステップを踏んで、片付けやすい環境づくりをしてあげましょう。

また、このころは子どもの個性もかなりはっきりしてきているので、保護者のやり方を押し付けないことが大切です。たとえば現在6年生になるうちの長男は、物をしまうのが苦手で、理性より感覚で動くタイプなので、手間のいらないざっくり収納が向いています。一方、1年生の妹は、小さいころから言われなくても「出したらしまう」タイプで、取り出しやすいよう、引き出しの中もきれいに仕切る収納が好き。子どもの性格を見極めて、サポートしてあげてください。

自分で片付けられるようになってきたら、保護者は徐々に「手」を出すより、「目」をかけるようにしてあげて。たとえば、「最近ちょっと散らかってきたけど、一緒にまた『いる』『いらない』をやってみようか」などとアドバイスし、どうすればもっと片付けやすくなるか、子どもに考えてもらうようにしていきます。

◆思春期以降 : 口も手も出さないけれど、心は離さずに
「もう5年生なのに」「中学生なのに片付けられない!」と感じている場合は、できて当然とは思わず、環境作りをやり直す必要があります。片付けをすることの意味についても、もう一度子どもに伝えることが大切でしょう。

何を言っても聞かないような状態であれば、「何か手を貸せることはある?」「片付ける手伝いが欲しい時は言ってね」とだけ伝えて、待つしかないと思います。「片付けない」ことがストライキのような反抗の手段になっている場合もありますし、友達関係や勉強など、ほかに大変なことがあって片付けどころではない場合もあるでしょう。そんな時、保護者は何かおいしいものでも作って、心と体を満たしてあげるくらいしかできないのではないでしょうか。口も手も出さない代わりに、心を離さないことが大切だと思います。
もし、部屋に入ったり手伝ったりするのはOKならば、一緒に片付けてあげて「きれいって気持ちがよいな」ということをもう一度感じてもらうことも大事かもしれません。

実は私も、思春期は母との関係が悪く、部屋もめちゃくちゃな状態でしたが、近くに住んでいた祖母がたまに来て、窓を開けて空気を入れ替えたり、そっと積んであるものを揃えたりしてくれていました。学校から帰ると、朝はすさんでいた部屋の空気が、なんとなくきれいになっていたのを今でも覚えています。気持ちと空間はつながっている。その感覚が、今の仕事にも結びついています。



片付けることで、目に見えないものを選択する力も付く

なお、私が片付けを学び始めたのは、30歳を過ぎて専業主婦になり、家事や育児はどこまでも続いて終わりが見えないと感じていたころです。子育てに追われるうち、家じゅうに物が散乱して気持ちまでイライラ。そんななか、引き出しを一つ片付けてみたことで心が穏やかになったのがきっかけです。そして、子どもと一緒に片付けに取り組んでみて、片付けは自立を助け、さまざまなことを教えてくれるんだなあと実感しています。

特に感じるのは、「目に見えるものを整理すると、目に見えないものを整理する力も付く 」ということです。物を収納する「空間」にも限りがあるように、一人の人間が使える時間や労力にも限りがあります。時間も、お金の使い方も、大量に入ってくる情報も、時には人間関係にも、整理が必要になってくるのです。自分にとって大切なもの は何か……と考えながら片付けをしているうちに、時間の管理もできるようになり、情報に振り回されることもなくなり、生きることがとても楽になりました。一番うれしかったのは、以前は「ママは怒ってばっかり!」と言われていたのに、最近、長女に「ママみたいに、楽しそうに生きたい」と言われたことです。

現代の保護者は忙しく、仕事・家事・子育てなど一人で何役もこなさなければなりません。でも、折に触れて一人の人間に立ち返り、自分を大切にすることが、結局は家族を大切にすることにもつながるのではないかと思います。保護者自身が笑顔でいること。そして、心地よい暮らしを求めていく姿が、子どもにも伝わるのではないでしょうか。
自分らしさを取り戻すため、そして幸せな家族というチームを支えていくために、ぜひお子さんと「片付け」に取り組んでみてください。

『片づけられる子ども部屋 ママと子どもの心地いい収納』『片づけられる子ども部屋 ママと子どもの心地いい収納』
<メディアファクトリー/鈴木尚子(著)/1,512円=税込>

プロフィール


鈴木尚子

アパレル業界で勤務後、ライフオーガナイズを学び、現在は片付けと収納のアドバイスや講演を全国で行う。子どもの片付け方に関する書籍の執筆や、女性誌などでも活躍中。

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