気持ちにゆとりを持って子どもと接するには?[やる気を引き出すコーチング]

「『早くしなさい!』って言う前に、一呼吸置いて見守ろうと思うんですけど、もうぜんぜん待てないんです」
「質問して、子どもが自分で考えるまで待つって、頭ではわかっているんです。でもダメなんですよねー。答えてくれないと、途中でイライラしてきて! コーチングって、自分にゆとりがないとできないですよね」
これらのお声を保護者の皆さんからよく伺います。どんなに言葉のかけ方を学んでも、「いかに自分をコントロールできるか」のほうが、実は、とても大切で難しいものです。自分の気持ちにゆとりを持つことは、コーチにとっても大前提。では、そのために、コーチはどうしているのかの一例を、今回はご紹介したいと思います。



エネルギーチャージ法を持つ

自分の心身をいつもよい状態に保つために、コーチはおのおのにエネルギーチャージ法を持っています。と言っても、そんなに難しいものではありません。たとえば、好きな音楽を聴くとか、好きな花を生ける、深呼吸をする、ゆっくりコーヒーを入れて飲む、歌う、踊るなど、ちょっと気分がスッキリする、落ち着く、気分転換になることを折々に取り入れています。
「忙しいのに、そんな暇なんてない!」と思われるかもしれませんが、忙しいからこそ、そんな時間をたった数分間でも持つと、気持ちが穏やかになり、「忙しいのに!」と思う気ぜわしさが減ります。
「子ども(相手)にどう働きかけるか」にばかりいきがちな意識を、相手ではなく、「自分がいかにゆったり落ち着いて過ごすか」に向けるようになると、相手との関係性が変わります。相手とのコミュニケーションをよくするために、まず、自分とコミュニケーションをとる時間を大切にすることです。自分をいたわったり、大切に扱ったりする意識を持つだけで、気持ちにゆとりが生まれます。



自己承認のススメ

最近、自分を自分でほめたことがありますか? 自分の好きなところをどれぐらい言えますか?
コーチングを学んで、子どもにイライラしなくなったと言うかたの多くは、「自分の自己肯定感が高まったことで、子どものことも受けいれやすくなった」とおっしゃいます。「自分はダメだ」「自分はできない」という想いが強いと、なかなかゆとりを持って、大きな視点からものを考えられません。「できていないこと」や「足りないもの」を数えると、エネルギーがどんどん奪われます。そうではなくて、「今日できたこと」「既に持っているもの」に目を向けてみませんか。自分が満たされていくのが感じられます。子どもの無限の可能性を信じてサポートする保護者自身が、自分の可能性を信じること、自分を認めることを実践していただきたいのです。
私は、一日の終わりに、「今日、自分ができたこと」を何か一つでも見つけ、自己承認しています。「今日も私はよくやった! 偉い!」と。「そんなばかばかしいこと」と思わないでください。これを毎日続けるだけでも、翌日の目覚めが違いますよ。自然と心が落ち着いていきます。この方法は、ほかの多くの講座生の皆さんも実証済みですので、おすすめします。



環境整備が与える影響

一見、コミュニケーションとは関係ないような話になりますが、日頃から、身の回りの整理整頓を心がけることは、けっこう効果的です。整った環境の中にいると、いつも落ち着いて相手の話を聴くことができますが、雑然とした空間にいると、それだけで、気持ちが殺伐としてきて、焦りや否定感がわいてきます。目につく場所から、少しずつ整えてみるだけで、空間が変わり、気分が変わります。そんな経験をされたかたもいるでしょう。イライラしている時、気ぜわしさを感じている時ほど、整理整頓をしてみてください。

「子どもがもっとこうしてくれたら」「相手がもっとこうだったら」と考えがちですが、まずは、自分を整えることが、心のゆとりにつながり、お子さまのやる気にも影響を与えます。がんばりすぎず、楽しんで試してみてください。

『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』
<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み>

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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