子育てにイメージ持てない中高生 家庭の役割も大!?-渡辺敦司-

2014(平成26)年末の総選挙で半月遅れた予算編成も決着しました。しかし今後とも子育て支援を含めた少子化対策をどうするかは、国や地方の将来を左右する大問題であり続けます。人口減少をくい止めるには、若い世代が子どもを安心して産み育てられる社会となるよう、さまざまな対策を打っていかなければなりません。しかし今どきの子どもたちは、自分が保護者となって子どもを持つということ自体に、必ずしも肯定的なイメージが抱けなくなっているようです。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2014(平成26)年12月に公表した「子育て支援策等に関する調査2014」(外部のPDFにリンク)によると、中・高校生で「ぜひ結婚したい」「できるだけ結婚したい」と回答したのは62.6%と、3人に2人を下回りました。中学生では65.8%なのが、高校生になると59.3%に低下しているのも気になります。結婚のイメージを複数回答で尋ねても、「好きな人とずっと一緒にいられる」(43.3%)に比べて「子どもが持てる」(29.5%)は10ポイント以上も低く、「子育てをするのが大変そう」は18.0%とほぼ5人に1人です。
クロス集計をしたところ、小さな子どもと触れ合う機会がない子は「結婚はしたくない」と答える割合も高くなっています。一方、友達と良好な関係を築いている子ほど、結婚についても前向きな考えを持っている傾向があるといいます。少子化の中で育っている今どきの子どもは、小さい子どもを抱えて幸せそうな家族を見る機会さえ、昔に比べて少なくなっていることは確かでしょう。そんななか、かねて若者の自尊感情の低さが指摘されているとおり、現在の人間関係に自信が持てないと、異性と将来にわたる関係を築くことに臆病になるのも仕方がないのかもしれません。

もちろん、欲しい子どもの数を尋ねれば「2人」(39.7%)と答える割合が最も高く、「あまり子どもは欲しくない」(3.3%)、「子どもは欲しいと思わない」(9.9%)は合わせても7~8人に1人にすぎません。ただ、中高生のうちから結婚・子育て願望が薄ければ、社会に出て厳しい現実に直面したとき、「無理をして結婚や子育てをしなくてもいいや……」と思ってしまっても、無理からぬことではないでしょうか。
厚生労働省などによると、出生率低下の2大要因は、晩婚化の進行と、夫婦出生児数(1組の夫婦が子どもを何人産むか)の減少だといいます。一刻も早く、若い世代に将来の結婚・子育ての希望が持てるよう、具体的な対策を打つことが求められます。

厚労省の「21世紀出生児縦断調査」(外部のPDFにリンク)によると、父親が家事を「よくする」ほうが、子どもが手伝いをしている割合が高いことがわかりました。小さい時から男女共同参画の意識を持たせることが、自分も家庭を持ちたいという肯定的なイメージにつながるのかもしれません。もちろん近年増えている一人親家庭に対しては、更に手厚い支援を行うことで、将来に否定的なイメージを持たせないようにすることが不可欠でしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

子育て・教育Q&A