お子さまとの距離を感じ始めたら…【前編】10歳からの子どもの心

お子さまが小学校高学年になると、お友達と遊んだり、習い事に通ったりする機会が増え、保護者と過ごす時間も徐々に短くなっていると思います。少しお子さまとの心の距離を感じ始めている保護者のかたもいるのではないでしょうか。そうした時にどのようなことに気を付ければよいのか、スクールカウンセラーの渡辺友香先生に聞きました。



10歳過ぎると保護者より友達を優先したくなる

お子さまが10歳くらいになると、友達との関係がより深まってくる時期になります。また、保護者に言われたとおりにしたくないという気持ちが出てくるようになります。今までは、何でも保護者に話していたのに、だんだん学校のことや友達のことを話さなくなってきたりもするでしょう。自分だけの秘密を持ちたくなってくるのもこの時期の特徴です。
保護者のかたは、少し寂しいかもしれませんが、お子さまとの距離を感じ始めたら、今までの育児が成功していると考えてよいと思います。距離ができたことを、決して悪いことではないと思ってほしいですね。10歳を過ぎても「お父さん・お母さんと一緒に居るのが一番楽しい」というのは、社会性の発達といった観点から見ると、少し心配です。小学校高学年のこの時期は、強がって反抗している時もあれば、まだまだ保護者に甘えてくることもあります。たとえば、さっきまで怒っていたのに、急に甘えてくることもあるでしょう。このように保護者のサポートを求めてきた時には、丁寧に関わってあげることが大切です。
ただ、お子さまが思春期に差し掛かる時期や現れ方には個人差があります。近年、中学受験をするお子さまの中には、小学生の間は親子が同じ目標に向かってがんばっているため親子の密着度が高く、仲はよいですが、中学生以降に一気に親離れしていく場合もあります。



「いつでも話を聞くよ」という姿勢を見せる

「以前は、学校の出来事などをよく話してくれたのに、最近は自分から話してくれなくて心配」という保護者のかたもいるかもしれません。たとえ、お子さまの口数が減ってきても、無理に聞き出したり、問い詰めたりしないほうがよいと思います。保護者がその日あったことを何気なく話しているだけでも、会話の糸口になるでしょう。

お子さまが話したい時に、じっくり聞いてあげることがとても大切です。意外にそのサインを見逃している保護者のかたは多いようです。最近、子どもたちからの相談を受けていて感じるのは、保護者を気遣う子が多いということです。「お母さんが忙しそうだから相談できない」「お父さんは今大変そうだから」などと、保護者のことを気遣うあまり、相談できないお子さまが実は多いのです。また、「こんなことを言ったら保護者が困るんじゃないか」と気にしているお子さまは多いので、話しやすい雰囲気や、ゆっくり過ごせる時間を作ってあげると、お子さまは相談しやすくなるのかなと思います。そうした間接的なサポートが、お子さまの手助けになるはずです。



主体的に動けるようにサポートを

お子さまが10歳を超えたら、保護者が直接手を出したり、口を出したりすることは、徐々に減らしていきたいですね。勉強や習い事も保護者にやらされている感じが強いと、自分のために自分を高めていきたいという意欲につながりにくくなります。また、「保護者の言うとおりにしていれば安心」と思って育つと、大学生や社会人になった際に、自己決定が求められる場面で苦労します。

小学校高学年からは、自分で決めて、自分で動けるようになるような手助けをしていただきたいと思います。たとえば、自分で決められないようであれば選択肢を出して選ばせるなど、自分で考えたことを自分の言葉で表現し、自分で行動できるようにしてあげましょう。特に、最近の小学生はとても忙しく、保護者が決めたスケジュールで、お子さまが動く機会が多いと思います。忙しい日々のなかでも、自分で考えて自由に使える時間を設け、自由な時間を楽しく過ごせるようになることで、主体的に動く力を磨いていくことができるはずです。

次回は、お子さまに悩みごとがある時のサポート方法についてお伺いします。


プロフィール


渡辺友香

臨床心理士、保健学博士。KIDSカウンセリング・システム研究会所属。現在、小学校・中学校・高校でスクールカウンセラーとして子どもの心のケアを行う。2児の母。

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