学生の就活に手厚い支援 就職率アップに取り組む大学-斎藤剛史-

現在の大学3年生から就職活動の開始時期が、「3年生の12月1日以降」から「3年生の3月1日以降」に繰り下げられたことは当コーナーで前に紹介しました。

大学生の求人状況は回復傾向にありますが、就活日程の変更によって就職状況がどう変化するか予断を許しません。そこで今回は、大学などが学生の就職活動についてどんな支援体制を敷いているのか見てみたいと思います。

文部科学省は2014(平成26)年7月、国公私立大学・短大・高専の計1,198校を対象に就職・採用活動の調査を実施し、うち1,018校(85.0%)から回答を得ました。それによると、学校内に「キャリアカウンセラー(就職相談員)」を配置している大学は65.8%、配置予定は1.5%で、合計67.3%が学生の就職相談に応じる体制を整えています。卒業者の就職率は受験生の大学選びの大きな材料となるため、各大学とも専門の担当者を置いて就職相談などに力を入れているようです。もしかすると現在の日本で、小学校から大学までのうちでキャリア教育などに最も熱心に取り組んでいるのは大学なのかもしれません。

また、キャリアカウンセラーを置いている大学のうち92.7%が、「効果あり」と回答しており、きめ細かな相談体制を敷いているようです。企業と協力してキャリア教育を行う「学内セミナー」などの行事を行っているのは79.4%、行う予定があるのは3.3%となっており、合計で8割以上の大学が企業と連携したキャリア教育を実施しています。

一方、就職先が決まらないまま卒業した学生への対応を見ると、支援活動を「行っている」が84.1%、「行う予定がある」が3.3%で、合計87.4%が卒業者に対しても就職支援の活動を実施しています。加えて、卒業者の就職支援をしている大学のうち79.5%が支援期間は「制限無し」と回答しています。卒業者に対する具体的な就職支援の方策(複数回答)は、「採用情報の提供」94.0%、「面談による就職相談」87.6%、「メール・電話による就職相談」76.1%、「論文・エントリーシート・履歴書の添削指導」69.8%、「模擬面接」60.7%、「(就職対策の)各種講座への出席案内・許可」19.6%などとなっています。さらに卒業者だけでなく、中途退学者に対する就職支援も19.0%(実施予定を含む)と約2割の大学が行っています。現在の大学の面倒見のよさがうかがえます。

このほか、景気の回復基調とともに少なくなりつつあるようですが、新卒予定者として次年度の就職活動に挑むため、就職が決まらない場合、わざと留年する学生もいます。これに対して、修得単位数が卒業要件を満たしていても就職活動のために留年を認める「卒業延期」の制度を設けているのは8.0%、検討中が3.0%でした。就職活動を理由にした卒業延期には消極的な大学が多いようです。

今後、景気の変動により就職状況がどうなるかは予測がつきません。単なる就職率だけでなく、具体的にどんな就職支援体制を敷いているのかは、これからの大学選びの大きなポイントといえるでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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