就活日程繰り下げに不安隠せぬ大学 企業は準備整う‐斎藤剛史‐

お正月シーズンもそろそろ終わり、これから大学入試センター試験を皮切りに受験シーズンに突入します。そして、今年からもう一つ別のシーズンが春の風物詩に加わることになりました。3月から始まる大学生の就職活動です。ただ文部科学省の調査によると、就職活動の日程変更について企業の9割以上が新しい日程への対応を進めている一方、大学の約6割が日程変更により支障が出ることを懸念しています。

2013(平成25)年に政府の要請を受けて経団連が見直したガイドラインでは、大学生の就職活動の日程が16(同28)年春の大学卒業予定者、つまり現在の大学3年生から、会社説明会などの「広報活動」開始は3年生の3月1日以降(従来は3年生の12月1日以降)、面接試験など「選考活動」開始は4年生の8月1日以降(同4年生の4月1日以降)に変更されることになりました。これについて文科省が2014(平成26)年9月に、企業2,500社のうち1,230社(49.2%)から回答を得た調査の結果によると、新しい就職活動の日程に対して「準備は完了」が11.0%、「これから準備に取り組む」が83.4%で、合計94.4%の企業が新日程に対応する準備をしています。
企業の選考方針などを見ると、採用選考のために大学の「成績証明書」などの提出を求めた企業は65.7%と7割に満たないうえに、提出を求めた企業のうち評価に活用したのは74.6%でした。いまだに大学の成績を採用に当たって評価しない企業が少なくないようです。就職活動日程の繰り下げは、大学教育の成果を企業がじっくり見られるようにすることも狙いの一つであるため、大学教育の成果の採用選考への反映は今後の大きな課題といえるでしょう。
また、海外留学経験者を「積極的に採用している」のは予定を含めて37.8%にとどまっており、グローバル化対応も課題となっています。ただ、従業員5,000人以上の企業だけを見ると、8割以上が留学経験者を積極的に採用しており、企業規模によって留学経験者の扱いに二極化傾向が見られるようです。

一方、文科省が2014(平成26)年7月に、大学・短大・高専1,198校のうち1,018校(85.0%)から回答を得た調査によると、就職活動の日程変更に「今年度支障はあまりないが、来年度は支障が生じそうである」と回答したのは38.7%で、約4割の大学が新たな混乱が起こることを懸念しています。さらに何らかの形で支障が出ると回答した大学を加えると55.5%、「今年度に比べ、来年度は支障は減りそうである」という回答も含めると合計59.1%の大学が「支障が出る」と予想している計算になります。大学側の懸念としては、就職活動開始前のインターンシップの増加などにより実質的に就職活動期間が長期化し、授業への出席状況が悪くなることなどが挙げられています。ただし、就職活動日程が変更されても定期試験の日程の見直しはしない、という大学が74.6%に上っています。

大学生の就職活動の繰り下げが、大学教育、企業の採用活動などにどのような影響を及ぼすことになるのか、3月以降の動きが注目されるところです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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