法科大学院の定員を大幅削減 2018年度まで工程表-斎藤剛史-

弁護士などの法曹になるための司法試験を受験するには、原則として法科大学院を修了することが必要です。しかし、司法試験合格率の低下で、法科大学院制度は大きな危機を迎えています。このため文部科学省は、中央教育審議会の提言を受けて法科大学院の定員を大幅に削減して2018(平成30)年度には修了者の7割以上が司法試験に合格できるようにするという改革方策とその工程表をまとめました。いよいよ待ったなしで法科大学院の大改革が始まるようです。

より実践的な法曹の養成を目指して2004(平成16)年度に創設された法科大学院は、当初の構想では修了者の7~8割が司法試験に合格できるという触れ込みで大変な人気を集めました。しかし、法曹関係者の強い反対で司法試験合格者を年間3,000人に増やすという政府目標が達成できなかったこと(現行約2,000人)、ピーク時には全国で74校もの法科大学院が設置されたことなどで、司法試験合格率が低迷。2004(平成16)年度に13.0倍だった全体の志願倍率が14(同26)年度には3.0倍まで低下し、法科大学院の9割以上が定員割れという状況です。加えて、文科省が法科大学院の再編のため2015(平成27)年度から補助金カットの方針を打ち出したこともあり、既に21校の法科大学院が学生募集を停止または停止予定を表明しています。
しかし、現在でも法科大学院全体の入学定員は3,809人もあるため、法科大学院教育の質の確保に向けて、文科省はさらなる定員削減を進めることにしました。具体的には2015(平成27)年度の入学定員を3,175人にまで絞り込みます。これはピークだった2007(平成19)年度の5,825人のほぼ半分に当たります。さらに政府の法曹人口見直しの検討結果が出る2015(平成27)年7月ごろまでに定員削減の数値目標を決定して、18(同30)年度には法科大学院修了者の7割以上が司法試験に合格できる水準にまで全体の入学定員削減を推し進める計画です。これによって現在残っている法科大学院のうち、司法試験合格率が低い大学院などの多くが再編統合を迫られることになるのは必至と思われます。

一方、法科大学院教育の質の確保については、「共通到達度確認試験」(仮称)を導入して厳格な進級判定を行うことにしました。同試験は2014~17(平成26~29)年度まで試行テストを重ね、18(同30)年度から本格実施の予定です。また、法科大学院は修了年限2年間(法学部卒の場合)で学部教育と合わせると司法試験を受験するには最短でも6年間が必要となります。これを短縮するため2015(平成27)年度から法学部3年間、法科大学院2年間の5年間一貫の「優秀者早期修了コース」(10校程度、定員計100人程度)を創設します。このほか、経済的余裕がない学生に法科大学院への進学を保障するため、一定以上の年収が得られた時点で返還を開始する、いわゆる出世払いの「所得連動返還型奨学金」を段階的に導入し、2017(平成29)年度から本格実施することも工程表に盛り込まれました。

文科省が目標に掲げる2018(平成30)年度までの3年間のうちに現在の法科大学院の姿は大きく変わることになりそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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