小学校英語の課題は教員の指導力 中学校との連携不足も-斎藤剛史-

社会のグローバル化に対応するため、英語教育の改革が大きな課題となっています。文部科学省は、次期学習指導要領の改訂で小学校高学年において英語を「教科」にする方針を打ち出していますが、そのためには現在の小学校の英語教育の成果や課題などをきちんと押さえておくことも必要です。日本英語検定協会の調査(外部のPDFにリンク)によると、現行の小学校の英語教育の問題点として「教員の指導力・技術」がトップに挙げられていることがわかりました。英語をどう指導するかは、小学校教員の間ではいまだに頭が痛い問題のようです。

調査は2013(平成25)年12月、全国の国公私立小学校のうち5,216校を対象に実施し、そのうち1,412校(27.1%)から回答を得ました。現在、小学校では5・6年生において教科書も点数による評価もない「外国語活動」という形で英語教育が実施されています。調査によると、外国語活動の年間授業時間数は「23~35時間」が小5で80.1%、小6で79.9%となっています。約8割の小学校で学習指導要領が定めた年間35時間の標準時間数を実施し、残る2割は何らかの形でそれ以上の授業時間数を組んでいるようです。また小4以下で英語教育を「実施していない」という学校は、小1・2が30.1%、小3・4が23.1%でした。7~8割の小学校は、小4以下でも総合的な学習の時間などを活用して独自に英語教育を実施していることになります。

現在の「外国語活動」における課題を聞いたところ、最も多かったのは「教員の指導力・技術」で55.5%、次いで「指導内容・方法」が49.2%、「ALT(外国語指導助手)との連携および打合わせ時間」が48.2%などとなっています。文科省は小学校教員の英語研修を進めていますが、実際に指導に当たる小学校教員の間では、英語をどう教えるかがまだまだ大きな課題となっているようです。逆に言えば、指導できる教員をどう確保・育成するかで、小学校の英語教育の成否が分かれるとも言えるでしょう。また、これからの英語教育では外国人のALTの活用が大きなポイントになりますが、ALTは複数の学校を掛け持ちしていることが多く、教員との間で十分な打ち合わせ時間が取れないということも悩みの種になっているようです。
英語教育における小中連携では、課題として「教員間や学校間で取り組む時間がない」という指摘が62.0%に上っています。一方、小中連携で有効な点は「指導内容の相互理解の向上」が67.7%、「児童の中学入学後の英語への意欲・関心が高まる」が63.5%などですが、「児童の中学入学後の英語力向上に結びつく」は32.5%しかありませんでした。小学校の教員は、現在の外国語活動が直接的な英語力向上に結びつくとはあまり考えていないようです。

このほか、小学校での英語の教科化については、楽しみながらコミュニケーション能力を身に付けるという外国語活動のよさが失われることを懸念する声も出されています。英語の教科化に当たっては、このような小学校教員の意識をどう変えていくのかも課題となるのかもしれません。


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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