教員免許更新制は今どうなっているのか 失効は0.1%のみ‐斎藤剛史‐

2009(平成21)年4月から教員免許に更新制が導入されました。マスコミなどでも大きな話題となりましたので、記憶しているかたも多いと思います。さて、その後、教員免許更新制はどうなっているのでしょうか。文部科学省の調査によると、2014(平成26)年3月末に更新ができずに教員免許が失効したのは、全国で58人だったことがわかりました。

教員免許更新制は、教員免許状に一律10年間の有効期限を付けて、現職教員は更新期限前に大学などで合計30時間の免許状更新講習を受講・修了しないと、免許状が失効するという制度です。ただし、現在は制度導入前に免許状を取得した者がほとんどを占めるため、現職教員は35歳・45歳・55歳になった各年度に免許更新をするという経過措置が取られています。
文科省の調べによると、2014(平成26)年3月末に免許更新期限を迎えた教員は9万4,118人で、そのうち免許状更新講習を修了できなかった者は332人(0.4%)でした。また、更新講習を修了できなかった332人のうち、教員免許が失効したのは58人(0.1%)で、残りの274人(0.3%)は失効する前に自主退職しました。さらに免許失効した58人のその後を見ると、更新申請期日を間違えた「うっかり失効」などにより4月1日付で新たな教員免許をもらい直して勤務を続けているのが23人、校長など管理職や学校事務職員など教員免許を必要としない職で勤務しているのが21人、退職が14人となっています。つまり、更新対象者9万4,118人のうち、失効前の自主退職者を除けば、免許失効によって退職に至った教員は実質14人だけということになります。

このような状況は今回だけではありません。第1回更新時期の2011(平成23)年3月から第4回の2014(平成26)年3月まで各回とも教員免許失効者の割合はいずれも0.1%にすぎません。また、免許失効前に自主退職した者の割合は、2011(平成23)年3月が0.5%、12(同24)年3月が0.6%、13(同25)年3月が0.4%、14(同26)年3月が0.3%でした。「うっかり失効」などを除外すると、教員免許更新制によって退職することになった教員は、自主退職を含めても全体の0.4~0.5%程度と推測されます。
この実態について、「少なすぎるのでは」と疑問を持つ向きも多いでしょう。それは教員免許更新制が、あくまで教員の指導力をリニューアルするためのものであり、一般的に受け止められているような「問題教員の排除」のための制度ではないからです。教員免許の更新も今年で4回目を迎え、10年ごとに大学などで更新講習を受けることで、現代的な課題などに対する指導力アップが図られたと評価する声が高まっています。一方、教員の多忙化に拍車をかけるだけで効果がないと廃止を求める意見も根強くあり、教員免許更新制に対する評価はいまだに定まっていないようです。

教育改革で導入された制度は当初は大きな注目を集めても、時間がたつにつれて関心が薄れていくのは、ある意味、仕方がないことです。しかし、今後の教員免許更新制の在り方を考えるためにも、その実態を社会全体がもっと知る必要があると思われます。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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