所変われば育て方も変わる?発見!世界の子育て【第2回】離乳食イロイロ(1)~イギリスで流行の離乳食の進め方とは?

楽しいことも、悩みや気がかりも多い「子育て」「教育」。このコーナーでは、日本とはちょっと違う、ほかの国の子育て事情をご紹介します。さまざまな方法や考え方を知ることで、子育てに対しての気持ちが少し楽になったり、自分に合った方法にアレンジしたり……。
日本の、そしてご自身の子育て・教育を見つめ直してみませんか。
2回目の今回は、イギリスでの離乳食の進め方について取り上げます。


先日、ロンドンから今年はじめに帰国した子育て中の友人に、私が海外の子育てについての原稿を書こう思っていると話したら、「今イギリスではBaby-Led Weaningがはやっているよ」と教えてもらいました。
「Baby-Led Weaning」、直訳すると「赤ちゃん主導の離乳」という感じでしょうか。聞いたことがなかったので、早速調べてみました(※1)。
「Baby-Led Weaning」とは、赤ちゃんの自主性を尊重しながら進める離乳食で、生後6か月くらい、赤ちゃんがちゃんと一人でお座りができるようになるころから始めるとよいとのこと。このころになると、赤ちゃんは食べ物を自分でつかんで自分の口まで持っていけるので「始め時」とのことです。

離乳食の食べ方は日本でも行われている「手づかみ食べ」ですが、内容は「離乳食」として特別なものを作るのではなく、家族が普段食べている食事の一部をあげればよい(ただし、塩分・糖分が多いもの、アレルギーなどに気を付けて)、とにかく保護者も子どももリラックスして楽しんで食事しましょう!という方法のようです。また、この食べ方だと、子どもが食べ物で遊んでばかりで、実際にはあまり食べてくれないので、食事の量は大丈夫だろうかと気になることもありますが、それも母乳やミルクで子ども自身が補うから気にしないようにと書かれています。

確かに、離乳食の時期は、離乳食作りで保護者も忙しかったり、手づかみ食べでは子どもが食べ物で遊び始めたり、食べ物を床に投げつけたり……と、なかなか大変な時期ですが、保護者が「こんなものだ」と割り切り、おおらかに構えることは大事ですね。

また、イギリスのSwansea大学で、離乳食を始めた生後6か月から12か月の298人について研究した結果によると、スプーンで食事を与えられた子どもは、「Baby-Led Weaning」のように自分自身で食べている赤ちゃんに比べ、食べ過ぎてしまう傾向にあるとのこと(※2)。

スプーンで食事を与えられる子どもたちは、保護者が子どもの食事を支配し、場合によっては赤ちゃんが欲しがっている以上に食べるようにプレッシャーをかけてしまっているから、子どもはお腹いっぱいになっても、それを伝えにくいのではないかと研究者たちは考察しているそうです。

なるほど、一番基本的な欲求である食欲を自分自身でコントロールできるようになるのは大切なことですね。子どものしつけは、食事も含め、伝統的には大変厳しいと聞いているイギリスですが(とはいえ、これも家庭による違いは相当大きいようですが)、自主性や自律性を尊重する部分も大切にされているんですね。

ちなみに、この研究を紹介している育児情報サイトでは、常に手づかみ食べだと親も疲れてしまったりするので、それぞれに合った組み合わせをすること、また1歳半から2歳くらいになったら、スプーンなどの使い方をしっかり教えていくことを、アドバイスとして付け加えています。現実的には、何事もバランスということでしょうか。

私自身は、娘の食事のしつけにはかなり苦労しましたが、これを読んでもっと自主性を育てるおおらかさを持つべきだったかなと今さら反省しました(娘は既に高校生……)。

次回は、「離乳食イロイロ(2)~世界の離乳食」です。

<引用・参照>
Mother & Baby (Bauer Consumer Media Ltd)
※1「Could Spoon Feeding Mean Your Baby Overeats?」(Orouj Tamimi, 2014 )
※2「5 Steps For Successful Baby-Led Weaning」(Rachel Burge, 2013)


プロフィール



大学卒業後、約25年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育研究開発センター(現・ベネッセ教育総合研究所)で子育て・教育に関する調査研究等を担当し、2012(平成24)年12月退職。現在は夫、娘と3人でロンドン在住。

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