避難所の学校、備えは大丈夫? 対応進むが、いまだ不十分‐斎藤剛史‐

東日本大震災や最近の台風災害の経験などが示すように、小中学校を中心とする学校は、災害の際の地域の避難所として大きな役割を担っています。いつ襲ってくるかわからない災害に備えて、備えは常に万全でなければなりません。しかし、国立教育政策研究所(国研)が全国の公立学校を対象に実施した調査によると、学校の防災体制は少しずつ整備されつつあるものの、依然として多くの課題があることがわかりました。

文部科学省は「災害に強い学校施設」を目標に掲げ、救命避難期・生命確保期・生活確保期・教育活動再開期の4段階に分けて、自家発電施設や備蓄倉庫など、避難所となる学校に必要な施設・設備を整えるよう、全国の自治体などに求めています。
国研の調査(外部のPDFにリンク)によると、2014(平成26)年5月1日現在、公立学校のうち避難所(指定緊急避難場所のみの指定は除く)に指定されている学校は、小中学校が2万8,692校(95.0%)、高校が2,746校(76.0%)、特別支援学校が409校(40.4%)などで、公立学校全体の91.4%が災害時の避難所となっています。各地域にある小中学校は、災害時の避難所として特に大きな役割を担っていることが改めてわかります。

ただ、自治体の対応を見ると、学校に避難所として必要な防災施設・設備の検討をしているのは都道府県が54%(前年度51%)、市区町村等が60%(同56%)、学校を避難所とする際の施設利用計画を策定しているのは都道府県が62%(同57%)、市区町村等が44%(同43%)で、前年度よりわずかに増えていますが、いまだに組織的な防災体制の整備に遅れが見られます。また、学校の防災施設・整備の維持については、「点検、維持管理をしている」というのは都道府県が68%(同62%)、市区町村等が52%(同49%)と半数以上に上るものの、「点検しているが、更新・修繕はしていない」が都道府県で26%(同28%)、市区町村等で26%(同26%)もあるほか、残りは点検・維持管理などを行っていませんでした。

避難所となっている学校のうち、具体的な施設・設備の整備状況を見ると、毛布や食料などの「備蓄倉庫(学校近隣施設を含む)」があるのは59.5 %(前年度51.8%)、「屋外利用のトイレ」が69.6 %(同69.1%)、停電時の「自家発電設備等」が40.2%(同34.2%)、飲料水確保の「貯水槽、プールの浄水装置、井戸」が36.3 %(同35.1%)、女性の着替えなど「プライバシーに配慮したスペース」が46.0 %(同41.8%)などとなっており、やはり少しずつ整備が進んではいるものの、全体的に見れば十分とは言えない状況が続いています。
また課題となっているのが整備状況の自治体格差です。たとえば、「備蓄倉庫(学校近隣施設を含む)」は、神奈川県が99.7%、東京都が97.9%とほぼすべての避難所指定の公立学校に整備している一方、約1割にとどまっている県もあります。

災害はいつやってくるかわかりません。保護者や住民は「ここに避難したらどうなるか」という視点から学校を見ることも必要でしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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