「思い」をどう伝えるか? 情報化社会で生き抜く力を育てる授業[こんな先生に教えてほしい]

毎週のように学校を訪ね、たくさんの授業を見ています。そして、先生方から授業への想いを聞いています。
小学生から高校生、そして、先生や保護者のかたに役立つ教育番組を制作するためです。そのなかで、「こんな先生に教えてほしい」と思った先生方のことを書かせていただきます。



今回紹介するのは、滋賀県のAL先生が小学3年生に行った情報教育の授業です。これは、インターネットなどさまざまなメディアをとおしていろいろな情報と接する子どもたちに、情報化時代を生きるために欠かせない力を育てる授業です。
その力とは、具体的には2つあります。


情報を捉える力……受け止め方、読み解き方、分類
情報を伝える力……伝える情報の選択、構成・演出

この力を育てるためAL先生は、作文や資料作りにPCを使ってきました。そして、取材した2学期の始めの段階では、子どもたちの間では、友達同士でメールのやり取りをするのが大流行でした。
目についたのは……

  メールください。くれたらおくります。
  うんじゃあげる。

このような感じのやりとりです。

AL先生は言います。
「インターネットの登場によって、情報は子どもたちと直接取引され、子どもたちはすべての大人のささやきを耳にし、世界中のトイレの落書きを目にすることになりました。キーワードをテキストボックスに入力し検索ボタンをクリックするだけで、発信内容に一切責任を持たない差別や偏見、誤りや偽りに満ちた情報が濁流となって子どもたちに押し寄せてきます。さらに、そこに、子どもたちの健全な発達を願う親や教師が介在する余地はありません」

そこで、学校でコンピューターの操作を指導することは、運転にたとえるなら、自動車の操作だけでなく、道路交通法などの法規や路上でのルールやマナーを教えることも含まれます。そして、インターネットも使い方を誤ると人の財産や命をも奪いかねない危険な道具でもあります。だからこそ、年齢制限も免許制度もないこのメディアを扱うためには、指導内容に情報モラルも含まれるのです。

今回の授業は、その入門編で、メールを使った情報の扱い方です。
まずは、子どもたちがやりとりしたメールからいくつかを選び出し話し合いを行います。

 例(1) 件名:くぁくぁくぁくぁくぁくぁくぁqqqqqqqqqqqqqqq  qqqqqqqqqqqqqqqqqqqqq
 例(2) サッカーはいれ。

この2つを見て子どもたちが感じたのは、「意味がわからないのは嫌」「命令口調は嫌」ということです。メールによって、受け取った人が嫌な気分になることがあることをクラス全員で共有しました。では、どうすれば嫌な気分にならないメールになるのか? 子どもたちの興味は自然と動いていきます。

そこで、AL先生は、まずさまざまな情報を伝えるメディアを見直します。

 公衆電話……声を伝える
 バス停の看板……バスの来る時間を知らせる
 点字ブロック……踏んで歩く位置を伝える

このほか、看板・標語・ポスター・校内の出欠表・本など。
先生は問い続けます。
「それらは何を伝えたいのか?」「そこに込められたメッセージは?」

次に、はがきコンクールで最優秀に選ばれたものを見せます。内容は、孫から、手作りの梅干しを送ってくれたおばあちゃんへのお礼です。これを読んで先生は、文字以外で何を伝えようとしているのか?と質問しました。
先生のねらいは、孫のおばあちゃんへの「思い」に気付くことです。

最後に先生は、「思い」を体感させるため、グループを作り、その中のひとりにメールを送るという授業も用意していました。
まず、メール文章を書く下書きの紙と画用紙を1枚配ります。そして、「友達でいてくれてありがとう」という内容をメール文章に書きます。そして、画用紙には、どういう「思い」で伝えているのかを書くのです。ただ、メール文章で書いた同じ言葉は使ってはいけないというルールがあります。
送られた側はメール文章を読んで、その思いを読み取り発表します。
画用紙に書かれた「思い」と一致しているならOKとなります。

コンピューターは、ほかのコンピューターとつながった瞬間から、ツールではなくメディアとなります。そして、情報教育は、人と人との関係を育てる学習のひとつになりました。
言葉を換えれば、情報というキーワードでほかの教科はすべて結びついています。
これを意識し、理解している先生は、時代の先を読めている先生と言えるのではないでしょうか?

プロフィール


桑山裕明

NHK編成局編成センターBSプレミアムに所属。これまでに「Rの法則」、「テストの花道」、「エデュカチオ」、「わくわく授業」、「グレーテルのかまど」「社会のトビラ」(小5社会)、「知っトク地図帳」(小3・4社会)「できた できた できた」、「伝える極意」「ひょうたんからコトバ」などの制作に携わる。毎週のように学校を訪ね、たくさんの授業を見ている。

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