高校生の海外留学、「職人修行」も応援 文科省が予定プラン‐斎藤剛史‐

文部科学省などが民間企業などから寄付金を集めて大学生の海外留学を支援する官民協働の「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」を始めたことは、当コーナーでも以前にお伝えしました。これに続いて同省は2015(平成27)年度から高校生の海外留学も同事業の支援対象にすることにしており、高校生コースの概要(予定)を発表しました。

「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」は、企業などから集めた寄付金をもとにして返済不要の奨学金、渡航費や授業料の一部補助などにより年々減少している海外留学者を増やすことを目的としているほか、支援企業などによる事前・事後研修を行うなど「産業界を中心に社会で求められる人材」を育成することも狙いです。また政府は、東京オリンピック・パラリンピック開催の2020(平成32)年を目途に、日本の海外留学生数を倍増(大学生は6万人から12万人、高校生は3万人から6万人)させる方針を打ち出しており、同プログラムの対象を15(同27)年度から高校生にも広げることにしました。文科省が発表した高校生コースの予定では、2015(平成27)年度の募集人員は300人程度。対象となる留学期間は高校教育に支障がないよう「14日以上3か月以内(1か月以上推奨)」とし、在籍する高校が教育活動の一環として認めた計画であることが条件です。また、大学生のコースと同様にスポーツ・芸術分野での留学も対象となるほか、海外の優れた職人や技術者などから指導を受ける職業系の活動、地域貢献ボランティア活動も支援対象となっています。

高校生の募集予定分野は、次のとおりです。


●アカデミック分野(150人)
知的好奇心の強い生徒、学問分野で秀でた成績を残す可能性がある生徒が対象で、サマースクールやサイエンスプログラムなどに参加。

●スポーツ・芸術分野(50人)
上昇志向が強い生徒、体育・芸術活動で秀でた成績を残す可能性がある生徒が対象で、世界のトップ指導者に指導を受けたり、国際合宿に参加したりする。

●プロフェッショナル分野(50人)
主として専門高校(工業・商業など)や高専の生徒が対象で、職業訓練・弟子入り・国際インターンシップなどに参加。

●国際ボランティア分野(50人)
社会貢献活動に興味・関心が強い生徒が対象で、現地の高校生やNPOなどと交流して、グローバル社会に共通する社会課題の調査活動。


文科省の調査によると、2011(平成23)年に海外留学(3か月以上)した高校生は3,257人で、前回の08(同20)年調査より49人増加しているものの、04(同16)年の4,441人と比較すると減少傾向を示しています。また2011(平成23)年調査では高校生の57.7%が「留学したいと思わない」と回答しており、高校生の「内向き志向」の強まりが指摘されています。一方、企業や大学などがグローバル人材を求め始めたことを受け、最近では高校生やその保護者の間でも留学を希望する者が増えているとも言われています。

同プログラム高校生コースの正式な募集は、国会での2015(平成27)年度政府予算成立後になる見通しですが、どれだけ高校生の応募があるかが注目されるところです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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