違う意見にも耳を傾け、思考力と表現力を身に付ける授業[こんな先生に教えてほしい]

毎週のように学校を訪ね、たくさんの授業を見ています。そして、先生方から授業への想いを聞いています。
小学生から高校生、そして、先生や保護者のかたに役立つ教育番組を制作するためです。そのなかで、「こんな先生に教えてほしい」と思った先生方のことを書かせていただきます。



今回紹介するのは、新潟県のAK先生の小学校での授業です。それは、2年2組のクラス全員が納得するまで話し合うという特別活動です。
相手の話に耳を傾け、自分の意見を言い、お互い本音をぶつけ、それぞれの考えを「すりあわせ」ます。
先生は、【そのプロセスを身に付けること】や【みんなの意見を大事にすること】が、社会に出た時に欠かせない力と考えています。

取材した日は、次の学年会で「ドッジボール」と「王様じゃんけん」のどちらをするかの話し合いでした。
まず、一人ひとりがそれぞれやりたい理由を話します。
「ドッジボールにしたい。理由は、1組に勝ったことがないから」
「王様じゃんけんにしたい。理由は、じゃんけんに強くなりたいから。それに、1組と楽しみたいから」。
などなど、みんな、はっきりと自分の意見と理由を話せました。

この授業のねらいは、話し合いをとおして、自分で考え、判断する力を育てることです。そのために、自分の意見をしっかり持ち、相手にわかるように伝える力が必要となります。先生は、それを学ぶ機会をつくり、何度も繰り返してきました。
その工夫とは……
・話し合いのテーマは、子どもたちの日常生活で生まれる身近な問題にする。
・自分の意見をはっきり持たせるために、子どもたちの選択肢を2つか3つに絞り込む。
・事前に子どもたちに「話し合いカード」を渡し、なぜその意見に賛成なのか、違う意見にはどうして反対なのか、といった理由を文章にさせておく。これは、自分の意見を持ち、相手に伝える内容を考える手助けになるため。
・話し合いは、賛成・反対の意見がひと通り出尽くすまで行う。
・意見はすべて黒板に書き出す。これは、自分とは違う意見や理由を知る機会をつくるため。
・どうして相手は、自分と違うものをしたいのかを考え、言葉にする機会をつくる。
・どうしたら相手を説得できるのかを同じ意見の仲間と相談する。これは、相手の意見にどれくらい耳を傾けているのかをチェックする意味合いも含む。
・あいまいな表現が出た時は、司会役は、「代わりに説明できる人はいませんか」と代役を立て、わかりやすい情報伝達のモデルを示す。
・多数決などにも「ノー」と言える雰囲気をつくる。

今回は、ドッジボール派  11人
王様じゃんけん派 5人 でした。
意見が出尽くしたところで、多数決で決めようという意見が出ました。
当然、王様じゃんけん派は反対します。

理想の話し合いは、満場一致です。でも、なかなか満場一致は起きないことを子どもたちは、これまでの経験で知っています。ただ、2年2組のクラスの子どもたちは、じっくり意見交換をする中で、相手が何を心配しているのか、何を楽しみにしているのかを知っています。つまり、本音を知っているのです。
そこで、出てきたのが、ドッジボール派と王様じゃんけん派の代表が、じゃんけんをして決めようというものでした。このポイントに、「クラスのみんなは、じゃんけんが大好き」というのがあります。つまり、これなら誰も傷つかないし、文句も出ないのです。
ちなみに、勝ったのは、王様じゃんけん派でした。

AK先生の言葉です。
「どっちに決まってもいい。子どもたちさえ納得しているならば……。
問題は、そのプロセスで何が見えて、何がわかったか。
そのために、相手の意見に耳を傾ける。そして、本音をぶつけ合う。それが、納得する近道」

ちなみに、AK先生は校長先生で、この話し合いの授業方法をずっと研究してきました。今、思考力と表現力を身に付ける授業が各地で盛んに行われています。でも、日本には、既にその大切さに気付き、その授業実践を積み重ねてきた先生方がいます。日本の教育界の層の厚さは、なかなかのものだと改めて思いました。

プロフィール


桑山裕明

NHK編成局編成センターBSプレミアムに所属。これまでに「Rの法則」、「テストの花道」、「エデュカチオ」、「わくわく授業」、「グレーテルのかまど」「社会のトビラ」(小5社会)、「知っトク地図帳」(小3・4社会)「できた できた できた」、「伝える極意」「ひょうたんからコトバ」などの制作に携わる。毎週のように学校を訪ね、たくさんの授業を見ている。

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