留学生獲得が大学を活性化 将来は国際色がより豊かに?‐渡辺敦司‐

グローバル化時代を迎えて、日本人学生を海外の大学に留学させるだけでなく、国内の大学が海外からも留学生を積極的に受け入れることが課題となっています。海外留学生の受け入れは、「全入時代」に悩む大学が入学定員を確保するためだけではありません。卒業後に国内企業から引く手あまたになる可能性を秘めた優秀な留学生を獲得することが、その大学全体の活性化につながります。政府も「留学生30万人計画」(2020<平成32>年まで)を推進しています。大学に進学したお子さんの隣には普通に留学生が座っているといった状況が珍しくなくなることでしょう。留学生の受け入れ動向は、どうなっているのでしょうか。

ベネッセコーポレーションは先頃、公益財団法人アジア学生文化協会(ABK)との共催で大学職員などを対象とした「2014(平成26)年度外国人留学生受け入れ志望動向研究会」を東京と大阪で開催しました。両会場を合わせて全国から約200人が参加しましたが、これは初めて開催した前年度に比べ倍増です。ここからも大学側の急速な関心の高まりがうかがえます。
ベネッセからは、日本留学を希望する外国人学生の志望動向が説明されました。外国人留学生のための日本留学情報ポータルサイト「JAPAN STUDY SUPPORT」(JPSS、ABKとベネッセが運営)への海外からのアクセスが最も多かったのは中国で、それにベトナム・タイ・インドネシアが続いており、以下、米国・韓国・台湾・マレーシア・インドといった順でした。経済発展に伴って、これらの国からの海外留学者数は2000(平成12)年から2012(同24)年までに中国4.9倍(69万4,365人)、ベトナム5.9倍(5万3,802人)、タイ1.3倍(2万4,491人)、インドネシア1.1倍(3万4,999人)となっています。このうち日本を選んだのは中国8万1,884人、ベトナム6,290人、タイ2,383人、インドネシア2,410人となっており、韓国(1万5,304人)や台湾(4,719人)、ネパール(3,188人)を下回っている国もありますが、アジアを中心に今後ますます出身国の多様化が進んでいくことが見込まれます。研究会に参加した有名大学を含む日本の大学も、そうした急成長の見込める国をターゲットに留学生獲得に力を入れることでしょう。

海外留学生が増えても、英語などができなければ友達になるのも大変だ……としり込みしそうですが、そう心配することはないかもしれません。研究会で事例発表したインターカルト日本語学校の加藤早苗代表によると、現状でも国内大学の留学生のうち60%以上は日本語学校出身者であり、日本留学の目的も昔のように高度経済成長への憧れというより、アニメやゲーム、タレントなどへの関心が大きいといいます。趣味をきっかけにお互いカタコトの日本語と外国語で話して友達になりつつ、楽しみながら、国内でグローバル人材になる第一歩が踏み出せるかもしれません。

同サイトは海外からの留学生向けですが、各大学の留学生受け入れ状況が詳細に載っていますから、国内の進学希望者にとっても大学選びの参考になるかもしれません。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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