短大は今後も「地域」に必要 タイプ別に役割-渡辺敦司-

浪人生を含めた4年制大学進学率が、51.5%と再び半数を超え過去最高も更新したことは、当コーナーで既に紹介しました。これに対して短大の進学率は5.2%。かつては男女合わせて13.2%にも達し(1994<平成6>年度)、女子にとっては4人に1人が進学する有力な進学先だったのですが、4大志向の高まりに伴って既に女子でも10%を割っており、今どきの高校生にとっては保護者世代に比べ影が薄くなってしまった感があります。しかし、そんな時代だからこそ短大の役割に新たな注目が集まっているようなのです。

中央教育審議会のワーキンググループは、このほど「短期大学の今後の在り方について」と題する中間報告書をまとめました。そこでは、
・最も短期間で学位(短期大学士)が得られる
・教養教育と専門教育のバランスが取れている
・数多くの資格が取得できるなど職業能力を育成している
・少人数できめ細かい教育を行っている
・地元の高校出身者が67%、地元就職率も7割と高いなど、アクセスしやすく身近
・教育の質が保証されている
といったメリットを挙げています。ただ、4大志向やより高い職業教育への志向のはざまで「短期大学の特色が見えにくくなってきている」(報告書)のも事実です。
一方で、卒業後には5,000人近くが4大に編入しており、編入学者の半数を超えています。2年間は短大に通い、それから4大に転じることで、一般的に学費が安いとされるところから高等教育をスタートさせることができるのです。実際、編入学に力を入れる短大も少なくありません。

そこで報告書は、今後の短大について
(1)専門職業人材の養成
(2)地域コミュニティの基盤となる人材の養成
(3)知識基盤社会に対応した教養的素質を有する人材の養成
(4)多様な生涯学習の機会の提供
という4つの機能を掲げ、これまでの実績や特長を踏まえつつ、4大や専門学校とも連携しながら、それぞれが強みを生かして「機能別分化」を図っていくことを提言しています。なお、この機能別分化という考え方は、大学全入時代に対応して中教審が4大で打ち出したものです(世界的研究・教育拠点、高度専門職業人養成、幅広い職業人養成、総合的教養教育、特定の専門的分野の教育・研究、地域の生涯学習機会の拠点、社会貢献機能)。

社会・経済のグローバル化はますます進み、「グローカル」(グローバル+ローカル)とも言われるように、たとえ国内にいてもグローバルな視点が不可欠になりつつあります。先行き不透明な時代に市民としてさまざまな選択を行っていくにも、高い教養が求められます。社会的・経済的格差が広がりつつある現実も無視できません。高等教育を受けた人材が社会でますます求められる中、地域密着型の高等教育機関として汎用的能力を身に付けさせるとともに、高等教育の「第一段階(ファーストステージ)」(報告書)の役割も担う短大の役割は、今後もなくなることはないでしょう。進路選択に当たっても、そうした新しい教育の在り方をよく見て進学先を検討していく必要がありそうです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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