コミュニティ・スクールで学校を核とした地域づくりへ‐斎藤剛史‐

文部科学省の協力者会議は、「社会総掛かりでの教育の充実」と「地域とともにある学校づくりの一層の推進」を目指して、コミュニティ・スクールを今後さらに拡大すべきだとする報告書をまとめました。コミュニティ・スクールを推進する文科省の狙いは一体何なのでしょうか。

以前にもお伝えしたように、コミュニティ・スクールでは、教員・保護者・地域住民などの代表から成る学校運営協議会が、学校運営の基本方針を承認したり、学校運営に関して校長や教育委員会に意見を述べたりするほか、教員人事についても都道府県教委に意見を述べることができるなどの強力な権限を持っています。2005(平成17)年度から全国17校でスタートし、1,919校(14<同26>年4月現在)まで拡大しました。このように徐々に拡大しているコミュニティ・スクールですが、教育改革に熱心な首長の主導による地域ぐるみの指定というスタイルが多く、一部の自治体に偏っているのも実情です。
これに対して文科省の協力者会議は、全国的にコミュニティ・スクールを拡大するよう求めた報告書をまとめました。そこには、小中学校を中心とする公立学校の変化が背景にあるようです。協力者会議の報告書は「地域とともにある学校づくり」と同時に、「学校を核とした地域づくり」を強調しているのがポイントです。

これまで文科省は、学校と地域の連携・協力を進めるため学校ボランティアなどを中心とする「学校支援地域本部」、放課後の活動を支援する「放課後子供教室」をはじめ、学校運営に外部の意見を反映させるための「学校評議員制度」、学校評価に地域などの意見を取り込む「学校関係者評価」などさまざまな事業や制度をその都度導入してきました。しかし、これらの制度が普及するに従い、ばらばらに機能し相互に連携していないことが問題になってきたようです。さらに、少子化による児童生徒減を通り越して、人口減少による地域の衰退という問題が地方を中心に深刻化してきました。
このため報告書は、学校支援地域本部や放課後子供教室などの取り組みを将来的にコミュニティ・スクールに統合することを提言しています。コミュニティ・スクールをとおして、地域のつながりを再生しようという狙いがうかがえます。
また、中学校区を単位としてコミュニティ・スクールを設置することも提言していますが、これは現在審議されている小中一貫教育の制度化に配慮するとともに、地域コミュニティの基盤を従来の小学校区単位から中学校区単位に拡大して、コミュニティ・スクールにより新たな地域づくりをするという思惑もありそうです。

さらに報告書は、教員人事に対する権限を学校運営協議会に位置付けなくてもよいとして、コミュニティ・スクールをよりソフトなものにしようとしていることも注目されます。学校は地域とともにあるはずですが、その地域そのものの活性化が必要で、コミュニティ・スクールを拡大しようとする文科省の動きからは、そんな危機感を感じることができるともいえるでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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