幼児が失敗を怖がるようになったら?【後編】子どもが伸びる保護者のサポートとは?

幼児になると自己認識が発達してくるため「失敗しそうだな、したら嫌だな」という気持ちが芽生えてきます。そうした気持ちを支えつつも、お子さまに意欲を持たせるためにはどうしたらよいのでしょうか。前回に引き続き、発達心理学・幼児教育の専門家である東京学芸大学の岩立京子先生に教えていただきました。



自信のあるところを伸ばす!

意欲的に取り組むお子さまに育てるには、苦手なことはいったんおいて、お子さまのよいところを重点的にほめてあげましょう。たとえば、「跳び箱が苦手でも、ブロックは得意」なら、ブロックについてほめるのです。保護者からほめてもらえると、お子さまの自信や自尊心が保たれ、ほかのことにも意欲的に取り組むようになるのです。また、自分の存在が認められていると実感でき、親子の信頼関係も構築されていきます。

一方、ほめる機会が少ないと、失敗したときにいくら「残念だったね」とフォローしても、自分に自信が持てないため「僕なんか、どうせ何もできないんだ」と悲観的に考えてしまい、なかなか失敗や挫折から立ち直れないのです。
お子さまのよいところをほめてと話すと、「うちの子は何もよいところがない」と言う保護者のかたがいらっしゃいます。どのお子さまにも必ずよいところがあるはずですし、それを見つけてあげることが大事です。どんな小さなことでも構いません。生活全体を見渡して、「朝一人で起きられる」「ご飯を残さず食べられる」などでもよいですね。



それでも失敗ばかりしてしまう子にはさりげなく援助を

よいところを伸ばして自信をつけさせる方法でアプローチしても、やることなすこと失敗していたら自信はつきにくいものです。その場合は、「うちの子は、どのようにサポートしたら成功体験を積ませることができるかな」ということを見極めてほしいですね。私の長男も3月生まれで、発達のペースがかなり遅いほうでした。普通の子がズボンや靴を一人で履けるようになっても履けず、三輪車も上手にこげませんでした。
三輪車はこげなくても人生で困ることはありませんから、トレーニングはやめました(笑)。ただ、ズボンや靴は一人で履けないと困りますので、ズボンはゆったりとしたゴムのもの、靴は大きく開いて履けるものを用意して、工夫することにしました。幼児になると保護者が手助けをするのは嫌がりますから、さりげなく援助をすることがポイントです。「わー、できたね!」という喜びが、次への意欲につながります。



「合わないかも」と思ったらいったん休んでみる

私の息子の三輪車の例のように、「これができなくても、まあ、いいか」と思えるものでしたら、「そのうちね」と長い目で見ることができます。ただ、習い事のように途中までは楽しくやっていたものを嫌がる場合は、どのようなサポートをしたらよいのか、迷うところだと思います。
私の子どももバイオリンを習っていて、レッスンをすぐに嫌がるようになりました。子どもも私もストレスがたまり、毎日、バトルでした。このままでは、親子関係まで悪くなると思い、非常に迷いましたが、いったんやめてみることにしました。全員がバイオリニストになれるわけではありません。成功するのは、本当の才能と厳しい練習とがマッチした一握りの人です。嫌がる子どもに無理強いして音楽嫌いになるくらいならやめて、様子を見てもよいかなと思いました。本当にやりたければ「また、やりたい」と言うと思いましたが、結局、息子は、お稽古をやめたら、水を得た魚のように元気に遊ぶようになりました。習い事がお子さまには合わないと感じたら、一度、休んでみることも必要かなと思います。



保護者が「失敗してもいいや」と思えることが大事

近年、幼いうちから受験をするお子さまも多く、評価に敏感で、保護者や周囲の大人の顔色をうかがうお子さまが増えています。年齢が高くなると、やがてはテストの点で優劣がつけられ、選抜されることも出てきますが、幼児・児童期は、本来、そういったことに関係なく、楽しいことに夢中になれる時期です。
保護者が「まあいいか、失敗しても」「次にがんばればいいじゃない」と言ってくれたら、お子さまはどんなに楽になるでしょう。また、保護者がいつもパーフェクトな姿を見せるのではなく、保護者自身の失敗談を話してあげると、「お母さんやお父さんも失敗したことがあるんだ」と共感でき、お子さまは失敗について過度に恐れを抱かなくなるでしょう。
お子さまに厳しい保護者のかたは、自分自身に自信を持てないというかたもいるのかなと思います。でも、毎日家事に育児に皆さん十分がんばっていらっしゃるし、中には仕事とも両立されているかたも多いと思いますので、自分で自分をほめていただきたいと思います。たまには、おいしいお菓子を食べながら息抜きしたり、音楽を聴いたり。そして、ちょっと肩の力を抜いて、おおらかにお子さまに接していただきたいですね。


プロフィール


岩立京子

東京学芸大学総合教育科学系教授。心理学博士。専門は発達心理学、幼児教育。幼稚園教諭や保育士を養成するかたわら、保護者の保育相談なども行っている。著書は『子どものしつけがわかる本』(Como子育てBOOKS)など多数。

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