子どもの自己肯定感を高める方法[やる気を引き出すコーチング]

折々に、小・中学生や高校生と接する中で、強く感じることがあります。「自分の長所がわからない」という子どもたちがとても多いということです。やってみたらできるかもしれないのに、「自分にはできない」と言います。自己肯定感が低いのです。「できない」と思っていたら、たとえ力があったとしても発揮されません。やる気などわいてきません。まだまだ若すぎるぐらい若いのに、「自分には無理だ」と限界をつくっているなんて、本当にもったいないと思います。
できていない時だけ指摘され、できていないところを減点されていたら、そうなってしまうのでしょうか。もう少し、「自分もやったらやれるかも」「自分にもよいところがある」と子どもが思えるようにならないものでしょうか。
今回は、おのおのに自分の長所を100個ずつリストアップしたことで、うれしい変化があったという親子の事例をご紹介したいと思います。



子どもの長所を引き出す質問

100個と聴いて驚かれるかもしれませんが、少しコツをつかめば、最初は2~3個しか思い浮かばなかった人も、あっという間に20個、30個とリストアップできるようになります。さらに、それぐらいあることに気が付くと、「もっとあるかも!」という気持ちがわいてきます。
日頃、焦点をあてて考えていないだけで、誰の中にも、もともと数多くの長所があります。コーチング講座でそのことを体験されたあるお母さんは、ご家庭でも、小学5年生のお子さんと一緒に取り組んでみたそうです。

とはいえ、いきなり、「自分の長所は何だと思う?」と質問しても、すぐには答えられないものです。そこで、講座で教わったように、お母さんはお子さんにいろいろな角度から考えてみるように質問をしました。
「大切にしているものは何?」
「好きなものは?」
「好きなことは?」
「毎日やっていることは何?」
「今までやったことがあることは何?」
「これからやってみたいと思っていることは何?」
何かに対してプラスの気持ちを持てること、当たり前のことが当たり前にやれていること、たとえ失敗であっても何かを体験したこと、まだやっていなくてもチャレンジしようという想いを持っていること、これらは、どれもすばらしい資源であり、その人の長所です。最初は、ほとんど思いつかなかったお子さんも、お母さんから質問されながら、一緒に考えているうちに、あっという間に30個書けたそうです。
お母さんは、その後も、折々に、長所が見つけられるような質問をしていったそうです。たとえば、
「今日は、何を一番がんばった?」
「今日、言われずに自分からやったことは?」
「今日、面白いなって思ったことは?」
「昨日よりもよかったって思うことは?」
そんなことを言い合いながら、ゲーム感覚で続けているうちに、ついに、二人とも100個のリストアップが完成しました。



長所100個リストアップの効果

この体験について、お母さんはこう話されました。
「やっているうちに、私の意識も変わってきました。『何かよいところは? 何かよいことは?』って、自分や子どもや物事のプラス面に意識が向くようになりました。そのほうがイライラすることが減っていいですね。あと、びっくりしたのが、子どもから、『お父さんの長所も100個書いてあげようよ』とか『今日、友達の長所も10個ぐらい教えてあげたよ』とか『宿題早くやったら、長所に書いていいよね』とか言うようになったんですよ! 苦手な宿題もがんばろうという気持ちがわいてきたみたいで、すごいなーと思いました」

本当にすばらしいですね! 「自分にはこんなよいところがある」という自己肯定感は、他者への肯定的な関わりやチャレンジ精神にもつながっていくようです。長所を100個リストアップするというのは、とてもシンプルな方法ですが、意外と効果的です。大人も子どもも、もっと自分が持っている資源に気付いて、自己肯定感をアップしてもらえたらと心から思います。

『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』
<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み>

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

子育て・教育Q&A