ロンドンでの日々~夫の海外転勤と娘とわたし【第21回】海外から日本へ~引っ越し、そして帰国

この連載では、ある共働き家庭の海外転勤前後の様子を具体的にご紹介します。前回は突然の帰任命令についてお伝えしました。今回は、ロンドンからの引っ越し、そして帰国についてお伝えします。




夫の転勤で始まったロンドン生活。先に赴任していた夫に遅れること7か月、高校入学を控えた娘と共にロンドンに渡り、家族3人での海外生活が始まりました。その生活も、ちょうど1年間で終わることが昨年末に決まり、年明けからは帰国に向けた準備がスタート。

引っ越し業者の見積もり、賃貸の部屋や電気・ガス・水道・電話などのさまざまな契約の解約、銀行関連の手続きなどなど……夫が多忙を極めていたので、ほとんどの手続きは私が自分で行う必要がありました。手続きの方法を調べたり、担当者に連絡・交渉したりするときは、当然すべて英語。日本語でも面倒な作業を英語で進めなければなりません。思えば私にとってはロンドン生活の中で、一番たくさん英語を使った期間でした。

しかし、「習うより慣れろ」の言葉のとおり、たとえ間違いだらけでも何かの目的を果たすために使う場がたくさんあると英語は上達すると実感。最初から「できない」と思って尻込みせず、まずはやってみることだと経験から学びました。

こうして引っ越し準備を進めつつ、3月の始めには娘の転入試験のため日本に一時帰国、さらにロンドンに戻って3日ほどで引っ越し本番。時差ボケになる暇もない目まぐるしい日程でしたが、引っ越しが終わって空っぽになった部屋を見たときには、家族の中にしんみりとした空気が流れました。たった1年だけの生活の場でしたが、そこは紛れもなく「我が家」。日本を遠く離れた場所で過ごしたことで、家庭という場が今まで以上に大切に感じられた時間でもありました。夫の海外転勤が決まった時点では夫の単身赴任という選択もありましたが、家族全員で過ごしたこの貴重な時間を考えるとよい選択だったと思っています。

引っ越しと並行して、娘は終業式を迎えました。1年間一緒に過ごした学校の仲間やお世話になった先生方、登下校の際に見守ってくれた守衛さんやスクールバスの運転手さんとの別れを惜しみつつ、娘が最後にあいさつしたのは登下校の途中でよく立ち寄っていた駅の売店のおじさんだったそうです。娘のことを覚えてくれて、時々こっそり値引きしてくれたり、日本語のあいさつを覚えて声をかけてくれたり。慣れない国で、一人で長距離の電車通学をしていた娘にはとても心強かったようで、おじさんあてにお礼の手紙を書いて渡したそうです。「次にロンドンに行くことがあったら絶対におじさんに会いに行く!」とも言っています。どこの国でも、そういう温かい地域の人に見守られて子どもは成長するものなのだと実感します。

こうしてちょうど1年間のロンドン生活を終え、娘と私は仕事の関係で遅れて帰国することになった夫を残し、3月下旬に日本に本帰国。我が家は、自宅を留守宅として家具などもそのまま残していたため、帰国後すぐに生活が再開できました。とはいえ、ガスを止めていたり、電話も解約したりしていたので、自宅についてからやることは山積み。特に使える電話が携帯電話も含めて一台もなかったこと、そして、インターネットが利用できなかったことは、その便利さに慣れていた私には想像していた以上に大変で、引っ越し関連の手続きや問い合わせも自宅からはできない状態でした。

その後、数日で引っ越し荷物が届き、片付けなどに追われているうちに娘の学校が始まり、1か月ほどして夫が遅れて日本に帰国。ロンドンでの引っ越し前からずっと慌しい毎日で、日本に戻ってきた感慨にふける間もないままでした。

しばらくして引っ越し後の慌ただしさも一段落し、家族揃って日本の我が家で過ごすようになって、やっと「ああ、帰って来たんだな」と実感。同時に、夫も娘も、そして私も、無性にロンドンが恋しくて戻りたくもなりました。日本以外にもそう思える場所が持てたこと、しかも家族全員が同じ思いを持てたことは、とても幸せなことだと感じています。

次回は最終回、海外転勤とその前後の経験を振り返ってみたいと思います。


プロフィール



大学卒業後、約25年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育研究開発センター(現・ベネッセ教育総合研究所)で子育て・教育に関する調査研究等を担当し、2012(平成24)年12月退職。現在は夫、娘と3人でロンドン在住。

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