ああ言えばこう言う子どもにどう接する?[やる気を引き出すコーチング]

最近、「一回でいいので、うちの子の話を聴いてもらえませんか。私だと、どうしても途中で説教になってしまうんです」と頼まれることがあります。保護者から言われてムリヤリというのは、私もあまり気が進みませんので、必ず、お子さんの同意も得て、本人から連絡をもらうようにして話を聴きます。
正直なところ、聴きながら、だんだんイライラしてくる時があります。保護者の方々が「途中で説教になってしまう」とおっしゃる気持ちがよくわかります。なぜかというと、ああ言えばこう言う高校生や大学生がけっこう多いからです。しかも、非常にネガティブです。
「でも、自分にはできないです」「でも、できなくても別にいいんです」などと言われると、つい、「自分の人生、本当にそれでいいのか?」と詰問してしまいそうになります。こんな相手とはどう接したらよいでしょうか?



説得や激励はかえって機能しない

逆に、皆さん自身が、子育てのことで思い悩んでいて、誰かに相談したとしましょう。自分が話したことに対して、こんな言葉が返ってきたら、どう感じますか?
「あなたがしっかりしないとダメでしょう」
「もっとお子さんと話し合ってみたら?」
「気にし過ぎじゃないですか? もっと気楽に! 気楽に!」
「ここを乗り越えたら、楽になりますよ。がんばって!」
「そんな弱気なこと言っていてもしょうがないでしょう」

相手はよかれと思って言っている言葉かもしれませんが、素直に受けとれない時は、受けとれない言葉です。
「それはわかっているんです。でも、それが難しいんです」
「それもやってきたんです。でも、うまくいかなかったんです」
「でも、そう言われても、そう考えられないんです」
こちらも、つい、反論したくなります。こうした会話を続ける限り、お互いに、ずっと、ああ言えばこう言う状態に陥り、前向きな行動にはつながりません。



心を相手に向ける

ああ言えばこう言うネガティブなお子さんの話を、説得や激励の言葉をはさまず、聴くことに徹していると、しだいに、話が前に向かい始める時があります。たとえば、「できない」「ムリ」と否定的な言葉で返答していたお子さんが、「でも、やるしかないっすよね」「がんばってみます!」などの前向きな言葉を自ら話し始める瞬間です。
どのような聴き方だとそうなるのかというと、こちらが、「相手をなんとかしよう」という気持ちを脇に置き、自分の心を相手に向けて話を聴くことです。
「次に何を言おう?」とか「どうして、こんなにネガティブなんだ?」などとこちらが頭の中で考えている時は、心が相手に向かっていません。自分の内側と対話をしている状態です。
「この子の言いたいことは何だろう?」
「どんな気持ちなんだろう?」
と、ただ、相手に意識を向けることを心がけます。



そのまま受けとる

さらに、こちらの解釈を加えず、相手の言葉をそのまま受けとることを意識していると、相手が自分で考えるモードに入ります。
「勉強しないとって思うんですけど、なかなかできないんですよ」
と相手が言った言葉に対して、
「やる気になれないんだね」
と、こちらの解釈で言い換えたりするのではなく、
「なかなかできないんだね」
と、そのまま受けとります。
「自信がないんだね」
「難しいと思っているんだね」
と、気持ちを受けとっていくと、相手は、自分で自分の内側を整理できるようです。そのうち、「こんなこと言っていても仕方ないな」「自分が勝手に思い込んでいるだけだな」と気付いていくのです。
「親が解決してやらなければ」「なんとか理解させなければ」と思う必要はありません。お子さんの気持ちを一つひとつ丁寧に受けとってあげられたら、お子さんが、自分で建設的に考えられるようになるのです。
最近は、ああ言えばこう言うお子さんと出会うと、「自分の器を試されているな」と思い、ひたすら心を相手に向け、受けとることに専念するようにしています。相手が前向きな言葉を話し始める瞬間は、本当に爽快です。

『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』
<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み>

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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