うちの子がいじめる側に? どう対応する?[やる気を引き出すコーチング]

このコラムを読んでくださっている皆さま、いつも本当にありがとうございます。コメント欄や直接いただくお言葉に励まされながら執筆しています。
先日の【「~しなさい」よりも子どもに伝わる言葉とは?】の記事にも、このような投げかけをいただきました。

【うちの子が「次にあの子がきたら無視しよう!」と楽しそうに言ってるのを聞いて大ショック! すぐ呼んで、「無視されてうれしい子なんていない」とか「自分がやられていやなことはしないで!」とか、「自分は面白いと思ってやってることでも相手はどう思う?」とか長々と説教してしまいました。なのに、しばらくしたらまた遊びの途中で一人の子を無視して楽しそうにしていました。また説教。どうしたら理解してくれるのか悩んでいます。これも~しよう!と言う言い方にすればやってくれるのでしょうか……。】

かねはるるさん、コメントありがとうございました。たしかに大ショックですね。遅くなりましたが、この場を借りて、参考にしていただけたらと思うことをお返事いたします。



実際の体験をとおして考えるよう促す

「自分がされて嫌なことはしないようにしよう」という言い方も試してみられたらいいと思いますが、「ダメなものはダメ!」とはっきり伝えることも、私は必要なことだと思っています。しかし、正論を伝えるだけでは、子どもはなかなか聴き入れられない、ということも現実です。かねはるるさんが、「相手はどう思う?」と質問をして、お子さん自身が考えてみる機会を作られたのはすばらしい関わり方だと思います。それでも、お子さんの行動が変わらないとしたら、残念ながら、まだ自分のこととしてとらえられていないからでは?と思います。

私のクライアントさんで、なかなか面白い人がいます。Aさんとしましょう。Aさんは、ある時、自分の子どもがいじめる側にいることを知って、とてもショックを受けました。どうしたら、「いじめはいけないことだ」と伝えられるかを考えました。そこで、Aさんが選んだ方法は、我が子がしたことをあえて、我が子にもやってみるというものでした。
たとえば、しばらく無視をするとか、「あなたがいると、むかつくからこっちに来ないで!」などの言葉を言うとか。
「何なの? お母さん、やめてよ!」お子さんは、当然、びっくりします。お子さんがその体験を味わってから、Aさんは、誠意をこめて質問しました。
「今、どんな気持ち?」
「これがずーっと続くとどう思う?」
「どうしてほしい?」
お子さんに考えてみるよう促し、そのあとで、こう伝えました。
「さっきは無視してごめんね。でも、かしこいあなたなら、きっと自分で気付いてくれると思ったから。無視されることがどんなに嫌なことか、わかったよね」
お子さんの気持ちを考えると、「これはなかなかの荒療治だな」と、正直なところ、私は思いましたが、親子の信頼関係があってこその方法なのでしょう。効果はテキメンだったそうです。



人格と行動を分け、こちらの想いを伝える

Aさんは、コーチングを受けるようになって、「やめなさい」「あなたが悪いでしょ」と言う代わりに、自分の気持ちを伝えるようになったそうです。先ほどの場面にもありましたね。「かしこいあなたなら、きっと自分で気付いてくれると思ったから」という言い方です。
「あなたが、人を傷つけるようなことをするなんて、お母さんはとても悲しい」
「あなたには、人の気持ちがわかるやさしい子でいてほしい」
「あなたならきっと理解できると信じているよ」

子どもの人格は決して否定することなく、「大切な存在」として認めますが、やっている行動は「悲しいこと」と伝えます。さらに、「あなたを信じている」というメッセージが伝わると、子どもは自ずと自分の行動について省みるのではないでしょうか。

かねはるるさん、何かのヒントになりましたらうれしいです。

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<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み>

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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