広がるスマホがらみの犯罪 狙われる無防備な子どもたち‐斎藤剛史‐

2013(平成25)年下半期(7~12月)に出会い系以外の交流サイトを利用して性犯罪などの被害に遭った18歳未満の子どものうち、スマートフォン(スマホ)を使用していた者は467人で、同年上半期(1~6月)の1.7倍にも上り、過去最多となったことが警察庁の調査(外部のPDFにリンク)でわかりました。また、スマホの普及に伴い犯罪の手口も変わりつつあります。保護者はスマホに潜む危険性をもっと真剣に受け止める必要があるようです。

東京都立高校生の84.5%がスマホを利用するなど、いまやスマホは子どもの間でも一般的になりつつあります。しかし、従来の携帯電話と違い、より自由に交流サイトなどに接続できるほか、LINEなどの無料通話アプリが使えるスマホには、危険も潜んでいます。警察庁の調査によると、2013(平成25)年下半期に一般の交流サイトを利用して性犯罪の被害に遭った子どもは695人でした。このうち携帯電話などからサイトにアクセスした子どもは628人で、うち467人(74.4%)がスマホを利用していました。携帯電話などを利用した被害者に占めるスマホ利用者の割合は、2011(平成23)年上半期が0.8%、同下半期が1.4%、2012(平成24)年上半期が8.3%、同下半期が23.9%、2013(平成25)年上半期が50.5%、同下半期が74.4%と急増しています。同時に交流サイトを利用した性犯罪の被害に遭う子どもの人数も増加しており、スマホを使用していた被害者は2013(平成25)年上半期274人だったものが、下半期は467人と1.7倍にも増えています。

一方、2013(平成25)年下半期に検挙された被疑者を見ると、携帯電話などで交流サイトにアクセスしたのが94.0%、そのうちスマホを使っていたのが75.8%でした。スマホの普及は犯罪の手口にも変化を及ぼしています。これまでは交流サイトに付随するミニメール機能を利用して子どもに連絡し、メールアドレスを聞き出すのが主流でした。ところが、2013(平成25)年上半期からミニメールの利用が減り、代わりにサイト内のプロフィールなどから直接連絡先を入手する手口が急増しています。これは、スマホの無料通話アプリのアドレスを利用したものと思われます。複数の人間と同時にやりとりができる無料通話アプリは、気軽に使える分だけ、子どもたちの警戒心が薄れるのでしょう。
また、被害に遭った子どもたちに尋ねたところ、94.5%が有害サイトを遮断するフィルタリング機能に加入していません。さらに「(交流)サイト利用を親に話していないので、注意を受けたことはない」が29.9%、「注意を受けたことはない、放任」が27.1%、「ゲームサイトと親に話していたので、注意を受けたことはない」が1.3%で合計58.3%、約6割が交流サイトの利用について保護者から何の指導も受けていませんでした。これに対して、検挙された被疑者の72.3%が最初から「児童との性交目的」で交流サイトにアクセスしたと答えています。スマホは便利なだけではなく危険もあるということを子どもたちに指導しておく必要があるでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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