オランダの小学校で実感したコーチングの効果[やる気を引き出すコーチング]

昨年、突然、オランダから1通のメールが届きました。「石川さんの本を読んで、日本にも教育分野で活動するコーチがいることを知りました。オランダの教育は、まさにコーチングです」という内容でした。オランダで教員免許を取得されたアムステルダム在住の日本人のかたからでした。
メールをやりとりするうちに、非常に興味をそそられました。「ぜひ一度、自分の目で確かめたい」。ということで、先日、ついに、オランダに行ってきました。小学校をはじめ、いくつかの教育現場を見学させてもらいましたが、いずれも、そのユニークな教育システムと子どもたちがイキイキと学ぶ姿に大きな衝撃と感動を覚えました。そのほんの一端ですが、今回はぜひ、オランダで感じてきたことをお伝えしたいと思います。



勉強方法も子どもが自分で決める

まず、新鮮だったのが、子どもたちがじっと座って一斉に授業を聴く場面がほとんどないことでした。子どもたちは各自、好きな場所で好きなことに取り組んでいます。絵を描いている子もいれば、工作をしている子、文字の練習をしている子、友達と演劇の練習をしている子もいます。日本の学校と比べると、「これが授業なんだろうか?」と思う光景ですが、子どもたちは非常にイキイキと集中して取り組んでいました。このような独自の教育スタイルは、公立であっても、私立であっても、おのおのの学校の裁量で自由に選択できるそうです。学区はなく、自分の子どもに合いそうな学校を保護者と子どもが選んで入学します。
「今日、何をするのかは、子どもたちが自分で選択します。1週間の課題は決まっていますが、1週間のうちに、どの順番でいつやるのかも、子どもたちが自分で決めて取り組みます。誰かと一緒に取り組む課題もありますので、その都度、子ども同士で相談しながら一緒にやっていきます」と、ある学校では説明されました。
小学生から、自分で選択し、自分で計画し、自分で取り組むことが自然と習慣づけられているのです。与えられてやるのではなく、自ら選んで学ぶことがやる気を引き出すうえで重要なのだとあらためて思いました。



質問によるコミュニケーションが中心

学校によってさまざまな手法がとられていて、どれもユニークだったのですが、方法が何であれ、どの学校でも、子どもたちとのコミュニケーションにコーチングがしっかり根付いていることに、私はとても感動しました。
授業が始まる前に、先生が子どもたちに質問をします。
「今日は、どんな目標でやる?」
「今日は何ができたらいい?」
おのおのの課題に取り組んでいる子どもたちに、先生が折々に声をかけていきます。
「何を作っているの?」
「どうしてこれを作ろうと思ったの?」
「工夫したことは?」
「ここから何を学んだ?」
単に、やりたいことをやって、「あー、楽しかった」で終わらないように、気付きと学びを引き出す質問をしていきます。
授業の最後にも質問をします。
「やってみて、どう感じた?」
「次はどうすればもっとうまくできると思う?」
注意を促す時も、指示命令ではなく質問です。
「あれ? それは何に使うものだったっけ? その使い方はどう思う?」
「今、○○さんが話している時間だけど、みんなはどうしたらいい?」

私はオランダ語がわかりませんので、通訳のかたを介して、やりとりを聴いているのですが、言葉以外のコミュニケーション(たとえば、表情や声のトーンなど)からもたしかに感じ取れるものがありました。先生方の質問は、「子どもなんだから、私が教えてあげないとわからないでしょ」というスタンスではなく、「自分で考えられるよね。自分でできるよね」という在り方から発せられる質問でした。
このアプローチを毎日繰り返されていたら、子どもは自ずと「自分で考え、自分で解決できる」と思うようになるでしょう。そして、「自分の人生は、自分しだいでどうにでもできるんだ」という気持ちが育っていくでしょう。この自発性と自己肯定感は、知識以上に、将来、大きな財産になるはずです。

オランダで行われている手法や制度を、そのまま日本に持ち込むにはいろいろと制約があるかもしれません。しかし、コミュニケーション、中でも特に「質問」は、日本でももっと取り入れていけるのではないかと思って帰ってきました。自ら選択し、自ら学ぶ気持ちを引き出すうえで、コーチングの質問は本当に効果的だと思います。

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プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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