今日から始めよう! 家族の防災【前編】 経験値を上げ、クセをつけよう

防災について家族で考える……。大切だとはわかっていても、どこから取り組めばよいのかわからないかたも多いのではないでしょうか。今回は、3人のお子さんの母である、危機管理アドバイザーの国崎信江先生に、家族の防災について伺いました。



とりあえずの安心より具体的な危険を知ろう

「防災」というと、市販の防災グッズを揃えて、食料品を定期的に新しいものに取り替えれば「とりあえず」安心と、お考えのかたも多いと思います。しかし、本当の意味での安心は、まず住んでいる地域の現状を把握し、「何が危険なのか」を知るところから始まります。調べるのに便利なのがハザードマップ。これは、自然災害の被害を予測し、その範囲を地図にしたもので、多くの自治体が公開しています。国土交通省のサイトから検索することもできますので、すぐお住まいの地域の「危険」をご確認ください。

ハザードマップを読み込んでいくと、「うちから避難所までの距離は近い。しかし、大地震が起きると周囲が火災になる可能性が高く、避難所にたどりつけそうにない」「大地震で液状化現象が起きるかも。そうなると長期間の断水は避けられない」などといったことがわかってきます。そういう危険をふまえたうえで、住んでいる地域に合った防災計画を立てることが大切です。もちろん、防災グッズも計画に沿って選びましょう。



防災センターで体感しておこう

防災の知識を身に付ける方法としては、地震の揺れや避難方法などが体験できる「防災センター」もおすすめです。私は3人の子どもとの家族旅行の際は、旅行先の防災センターを訪れるようにしています。その地域に根ざした防災対策を知ることができますし、何より子どもたちの防災への関心が高まります。丸一日過ごすことができるので、旅行のスケジュールに組み込んでみましょう。

旅行中にできることとしては、宿泊施設が耐震改修をしたかがわかるプレート(外部のPDFにリンク)をチェックするのもよいですね。これは、一般財団法人日本建築防災協会に寄って、その建物が「基準適合認定建築物」であると認定を受けたことを表すものです。今のところ、どこに表示するかが決められておらず、壁に貼ってあったり、フロントに置かれていたりとさまざまです。宝探しの感覚で、お子さんと一緒に探してみてはいかがでしょう。
私自身、よく行く街に関しては、どの建物にこのプレートがあるかを確認しています。そして、いざというときの避難場所の目安にしています。

ほかにも、兵庫耐震工学研究センターのE-Defenceという実験施設の実験映像では、さまざまな建物の耐震実験を見ることができ、安全な我が家にするための参考になります。



クイズで防災の「クセ」をつけよう

ハザードマップの確認や防災センター訪問などで、親子で防災への意識と知識が深まったら「我が家の防災マニュアル」をつくります。避難ルートを家族で歩き、どこに危険があるかなどを調べ、待ち合わせ場所も決めていきます。小学3年生になれば地図が読めるようになりますので、お子さんに防災マップをつくってもらうのもよいと思います。そして、家族の名前・緊急連絡先・避難場所など、必要なことを書き入れた「防災メモ」をつくり、家族全員で持ち歩くようにしましょう。

防災マニュアルや防災グッズを揃えたあとも、防災に対する経験値を上げていきましょう。たとえば、外出先で突然「ここで揺れたらどうする?」とクイズ形式で質問すると、子どもたちの多くは一生懸命考えます。これを続けるうちに、非常口の確認が習慣化するなど、防災に対する「クセ」がつくようになります。また、意外な対策法を子どもが言うこともあり、これはこれで、家族で防災について考えるヒントになります。

中には、震災の映像などを見たことで、防災について向き合いたくないお子さんもいるでしょう。それは、災害がいつまた起きるのかが不安であり、本当に起きたらすごく怖いという気持ちをうまく表現できないからです。そのことを理解したうえで、お子さんのわかる範囲内で現状を語り、「ママも不安だし、怖いよ」「でも準備しておけば大丈夫だからね」と声かけをしましょう。

後編は災害が起きてしまったときに「自分の命を守る」ためのアドバイスを紹介します。


プロフィール


国崎信江

危機管理アドバイザー、危機管理教育研究所代表。大阪教育大学附属池田小学校の事件をきっかけに、犯罪や事故から子どもを守るための対策を研究。国や自治体などの防災・防犯対策に携わるなど、身近に起きる危険への備えの必要性と実践の提唱を続けている。
https://www.kunizakinobue.com

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