いよいよ反抗期!?の子どもとの向き合い方[やる気を引き出すコーチング]

「中学生になってから、急に言葉づかいが乱暴になってきて、いつも不機嫌というか、イライラしているんです。『何かあったの?』と声をかけても、『うるさい』『あっち行け!』ってにらまれるし、そのうち、声をかけても無視するようになって。言いすぎると、『家出する!』って、夜でも外に出て行くんですよ。もう困ってしまって。反抗期なんでしょうか。どうしたらいいのかわからないんです」
そう言って、急に変貌(へんぼう)した息子さんにずっと悩んでいたKさん。最近、少し楽になってきたと話してくださいました。よい担任の先生と出会え、お子さんとの向き合い方が変わったことが大きかったようです。


いよいよ反抗期!?の子どもとの向き合い方[やる気を引き出すコーチング]



子どもと同じ土俵に上がらない

家庭でのお子さんの粗暴ぶりについて、Kさんが担任の先生に訴えたところ、先生は、ニコニコしながらこうおっしゃったそうです。
「いいですね! 順調に成長していますね! 大変順調! すばらしい!」
Kさんは、この言葉で身体の力が抜けたそうです。
「順調って、これでいいんですか?」
と、思わず、聞き返してしまいました。
「大人になっていく過程で、子ども自身も自分の感情をどうコントロールしていいのかわからない時期があります。なんとなく不安でイライラして、どうしようもなくて家族にあたってしまう。成長しつつある証拠です。そんな時、親も一緒になって、感情的になってしまうと、お子さんもよけいに感情的になってしまいます。『来た! 来た! 反抗期!』と思って、ドーンと受けとめてあげてください。大人の大きな器で、『そうか、イライラするのかー』と、イライラを受けとめるだけでいいんですよ」
「はあ、私は、いつも、『何? その言い方!?』『そんな言葉づかいやめなさい!』って、感情的に反応していました」

このお話を聴いて、私も日頃、同じことを意識してコーチングをしているなーと思い出しました。それは、「相手と同じ土俵に上がらない」ということです。もちろん、コーチとして、相手に寄り添い、見守り、目標達成を支援しますが、一歩引いて客観的に相手と向かい合うようにしています。「ああ、それは困った! 大変だ。難しい問題だ。どうしたらいいんだろう?」などと、コーチ自身が相手と同じ感情にどっぷり浸かっていたら、相手もその感情から抜けられません。「そうなんだ。今、そういう状況なんだ。そう感じているんだね。で、どうしたらいいかな?」というスタンスに立って、コミュニケーションをとることで、しだいに相手も落ち着いて建設的に考えるようになります。



存在を認める言葉をかける

一緒に感情的にならないと決めたKさんは、他に、先生に言われた2つのことを実践するようにしたそうです。
・何があっても、毎日、親のほうからあいさつをする
・名前を呼んで言葉をかける
の2点です。「それだけでいいの?」と言いそうになりますが、実は、これらは「相手の存在を承認する」とても大切なコミュニケーションなのです。
朝、顔を合わせたら、「○○ちゃん、おはよう」、家に帰ってきたら、「○○ちゃん、おかえり」、食事の時は、「○○ちゃん、ごはんだよ」。ただそれだけなのですが、これらは、「私はあなたがそこにいるのを知っているよ。いつも見ているよ」というメッセージを送り続ける行為です。どんな時でも、自分を受容し、見守ってもらえている安心感は、子どもの否定的な感情を和らげるのです。
「口をきかないのも順調な成長と思って、あいさつだけはしていると、向こうからもあいさつはするようになるんですね。最近は、食事の時に、ちょっとずつ学校の話をしてくれたり。そんなにしゃべるわけじゃないけど、前より私も楽になりました。たしかに、こんな時期もありますよね」
というKさんの言葉からも、存在を認める言葉かけの効果を感じます。
「反抗期かな?」という時も、深刻になり過ぎず、Kさんのように気楽に構えてみてはどうでしょうか。

『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』
<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み>

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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