子どもが「吃音」かもしれないと思ったら【前編】基礎知識
幼児期のお子さまは、言葉がつまったり、同じ単語を繰り返したりすることがあります。こうした現象は、言語が発達していく過程で起きる一過性の場合もありますが、吃(きつ)音の初期症状の可能性もあるそうです。『吃音は治せる』の著者であり、目白大学保健医療学部教授の都筑澄夫先生にお話を聞きました。
吃音とは何か
吃音とは、意志とは関係なく言葉が出にくくなる発話障害の一つです。主な症状には以下の三つが挙げられます。
(1)「ミ、ミ、ミカン」というように、音を繰り返す=「繰り返し」
(2)「ミーーカン」というように、音を引き延ばす=「引き延ばし」
(3)「ミカン」と言おうとして、最初の「ミ」の音がつかえて出なくなる=「ブロック」
吃音は、獲得性吃音と発達性吃音の二つに大きく分けられます。
- ◆獲得性吃音…青年期以降に発症し、原因が明らかな吃音
- (1)獲得性神経原性吃音…脳卒中など脳の病気が原因となって起こる吃音
- (2)獲得性心因性吃音…心的なストレスが要因で起こる吃音
- ◆発達性吃音…幼児期に発症し、原因がよくわかっていない吃音
吃音の大部分は、幼児期に発症する発達性吃音が占めています。発達性吃音の原因は、はっきりとしていませんが、その人が持つ遺伝的要素(吃音になりやすい体質)と、何らかの環境的な要因が合わさって起こると考えられています。
吃音の初期は波があり、見過ごしがち
発達性吃音は幼児期に発症し、だんだんと進行していくという特徴があります。発症したころは、しばらく症状が出たかと思うと、ぱったりと出なくなるという「波」があります。しかも、その波は「月単位」でやってくるため周囲の大人は「あれ、治ったのかな」と思い、吃音の発生を見逃してしまう場合があります。しかし、それは「波」であり、決して治ったわけではありません。この時期のお子さまへの関わりあい方に気を付けなければ、症状が悪化してしまうことがあります。
多くの保護者は、吃音症状の中でも言葉がつかえて出てこない「ブロック」の症状が現れ始めてようやく「これはおかしい」と気付き、病院に駆け込むケースが多いです。しかし、そうした深刻な症状が出始めてからでは、治療に長い時間が必要になります。できるだけ早く治療に取り組むことが、吃音治療では大切です。
「吃音は自然に治る」と言われることもあります。確かに、平均で約50%は自然治癒すると言われています。しかし、この数字は、発症しても自然治癒した人が2人に1人はいるけれども、治療しなければもう一方は重症化してしまうということを示しています。自然治癒するかもしれないけれども、積極的に治療に取り組んだほうが賢明だと言えるでしょう。
「あれっ」と思ったら言語聴覚士を訪ねてください
幼児期は、言葉が急速に発達する時期であり、言葉がつまったりすることは誰にでもあります。運動に例えると、赤ちゃんはいきなり走り出すわけではなく、最初ははいはいから始め、つかまり立ちをするようになり、ようやくよちよちと歩き始め、次第に走れるようになるのです。
言葉も同様に、2歳児には2歳児レベルの発音があり、徐々によどみなくに話せるようになるのです。ですから、幼児期にすらすら話せる必要はなく、年齢並であればよいのです。それを逸脱してくるのが吃音です。
ただ、保護者のかたには、吃音か、発達段階のものなのかは区別がつきにくいと思います。もし、お子さまが吃音かもしれないと感じたら、様子を見るのではなくできれば早く言語聴覚士を訪ねてほしいと思います。一般社団法人日本言語聴覚士協会や各都道府県にある言語聴覚士会のホームページで、言語聴覚士のいる施設を調べ、相談に行ってください。
「発達途上のものだから安心してください」と言われれば、安心して過ごせるはずです。また、吃音の症状だとわかれば、早期治療にとりかかることができます。
次回は、吃音の早期治療に有効とされる環境調整法について教えていただきます。
『吃音は治せる』 <マキノ出版/都筑澄夫(著)/1,440円=税込> |