食育の次は「睡眠教育」 生活習慣を改善‐斎藤剛史‐

食に関する教育である「食育」は、一般社会にもその重要性が認識されつつあります。そして「食育」の次の課題は、睡眠に関する教育となりそうです。文部科学省の「中高生を中心とした子供の生活習慣づくりに関する検討委員会」は、子どもたちの生活習慣を改善するため、睡眠の重要性を指摘した報告書をまとめました。また、厚生労働省は、「睡眠指針」を11年ぶりに改定して、適切な睡眠時間を取ることの重要性を訴えています。「睡眠教育」はこれからの新しいキーワードになるかもしれません。

健全な生活習慣のある子どもは、そうでない子どもよりも学習意欲が高く、体力・運動能力も高い傾向があることは、さまざまな調査で明らかになっています。このため文科省は、子どもたちの生活習慣を見直すため検討委員会を立ち上げ、具体的方策などを審議しました。ここで注目されるのが、睡眠時間に着目したことです。生活習慣の見直しなどというと、問題行動への対応や健全育成、道徳教育の充実、家庭の教育力の向上などといった話題になりがちです。これに対して同検討委員会は、睡眠時間が子どもの心身に与える影響を科学的に分析しながら、必要な睡眠時間を確保し、正しい睡眠習慣を身に付けることで、子どもの生活習慣を改善することができるとしています。

同検討委員会は、睡眠と子どもの心身の関係について、次のように指摘をしています。

  • ◆夜間にゲームやスマホなどのディスプレーを長く見ていると、その光で睡眠を誘うホルモンが抑制され、眠れなくなる。
  • ◆レム睡眠(脳が覚醒に近い状態にある睡眠)の際に、脳内で記憶の整理・定着が行われる。睡眠不足だと学習したことが脳内に定着せず、成績にも関係する。
  • ◆ノンレム睡眠(脳が休息している深い睡眠状態)の際、成長ホルモンが大量に分泌される。睡眠不足だと成長に影響したり、筋力やけがの回復に影響したりする。
  • ◆夜型生活をしながら学校生活を続けていると、慢性的な睡眠不足によって、疲労感や情緒不安定をもたらし、判断力を鈍らせたり、「うつ」に近い状態になり、「こころの健康」に影響を及ぼしたりする。


一方、厚労省も2003(平成15)年に策定した「睡眠指針」を11年ぶりに見直し、世代ごとに適切な睡眠時間などを提言しています。同指針は、若年世代が夜型の生活を続けていると人間の体に中にある「体内時計」が次第にずれていき、朝に体内時計をリセットできなくなる恐れがあると指摘しています。子どもの夜更かしは体に悪いというのは、科学的に見ても本当のようです。

文科省の検討会議は、「食育」の重要性は社会的に認められているが、睡眠の重要性については、「疲れを取る」という程度しか知られていない現状にあるとして、「睡眠に関する教育をもっと行う必要がある」と提言しました。そのためには、なぜ睡眠が大切なのか科学的知見や根拠を示して説明するとともに、子どもたちだけでなく保護者にも働きかけることが大切だとしています。きちんとした生活習慣の基本は、正しい食生活、そして十分な睡眠といえそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • がんばっているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
まなびの手帳ロゴ ベネッセ教育情報サイト公式アプリ 教育情報まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

子育て・教育Q&A