増え続ける通級 ADHDとLDも各1万人超に‐斎藤剛史‐

公立小中学校で通常の学級に在籍しながら、障害に応じて授業の一部を別の教室などで行う「通級指導」を受けている子どもたちは全国で約7万8,000人に上り、過去最多を更新したことが文部科学省の調査でわかりました。「通級指導」の対象者の増加の理由は、自閉症や学習障害(LD)などの発達障害のある子どもの通級が増えたためです。

文科省の調査結果によると、2013(平成25)年5月1日現在、全国の公立小中学校などのうち通級指導のための指導教室を設置しているのは、小学校が2,991校、中学校が566校、特別支援学校が63校の合計3,620校でした。これは公立小中学校の11.6%(前年度10.6%)に当たります。通級指導を受けている子どもの数は、小学校が7万924人(前年度比8.4%増)、中学校が6,958人(同14.8%増)で、合計7万7,882人(同8.9%増)となり、過去最多を更新しました。1993(平成5)年度が1万2,259人でしたから、20年間で6.4倍になった計算です。
通級指導の増加の主な理由は、従来の特殊教育が特別支援教育に切り替わり、一般の小中学校に在籍する発達障害児も特別支援教育の対象となったためです。発達障害である自閉症・LD・注意欠陥多動性障害(ADHD)のある子どもの通級指導対象者は、特別支援教育の前年度に当たる2006(平成18)年度は6,894人でしたが、13(同25)年度には3万3,401人となり、7年間で4.8倍にも増えました。

通級指導対象者を障害別に見ると、「言語障害」が3万3,606人、「自閉症」が1万2,308人、「LD」が1万769人、「ADHD」が1万324人、「情緒障害」が8,613人、「難聴」が2,044人などで、自閉症・LD・ADHDの発達障害が全体の42.9%を占めています。通級指導の時間数を見ると、「週1単位時間」が小学校は50.1%、中学校は35.6%、「週2単位時間」が小学校は32.8%、中学校は29.0%で、週1~2単位時間の指導が主流のようです。通級指導には、自校の指導教室などに通う「自校通級」(45.1%)、特別支援学校など他校の指導教室に通う「他校通級」(49.4%)、特別支援学校教員らによる「巡回指導」(5.5%)の3種類がありますが、自閉症以外の発達障害には「自校通級」の子どもが多いのが特徴です。
通級指導が増えた背景としては、発達障害に関する知識と理解が学校現場で進んだこと、教員定数の増加など通級指導のための体制が整備されたことなどが挙げられます。ただ、通級指導が増えるに従い、在籍する通常学級での特別支援が手薄になる傾向があると懸念する声も関係者の一部にあります。通級指導はあくまで特別支援教育の一部であり、対象児童・生徒が在籍する通常学級で特別支援がきちんと行われることが原則です。

周囲の子どもたちの目を気にして、通級指導を嫌がる子どもやその保護者も少なくないとも言われています。障害のある子どもとその保護者に通級指導を理解してもらうと同時に、周囲の子どもたちにも特別支援教育の意義をきちんと指導することが大切でしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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