ネット依存は「つながり依存」? ‐渡辺敦司‐

当コーナーでは新年度に入ったことをきっかけに、スマートフォン(スマホ)など携帯電話(ケータイ)の利用問題を改めて取り上げてきました。ただ、いつもケータイを手放せない「ネット依存」は、必ずしも家庭でルールを設ければ防げるというものではないかもしれません。インターネットに依存するのは、子どもなりの「わけ」があるからです。

一般社団法人日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)は先頃、「スマホ時代の学びと冒険」をテーマにフォーラムを開催しました(当時は一般財団法人コンピュータ教育推進センター=CEC)。その中の「つながり依存とは何か?--子どもが落ち込むネットの深淵」と題した分科会が、注意を引きました。そこでは、ネット依存を「つながり依存」として問題を捉えています。
ネット依存に陥る子は、現実世界に居場所がないからネット世界にはまるのではないか……。ついそう考えてしまいがちになります。しかし同会が作った委員会の調査によると、むしろ「ネット以外に居場所がある」「人間関係に恵まれている」と思っている児童・生徒のほうが、スマホの使用時間が長かったといいます。分析の結果、
(1)ネット以外に居場所がある子のほうが「つながり欲求度」が高い
(2)自分に否定的な意識が強くなってくると、欲求度も高くなる
(3)ネット上の人に相談する傾向がある子は、つながり欲求度も高い
ということもわかりました。

リアルな友達と、いつもつながっていたい。そうしたリアルな関係を維持するため、常にネットで確認しないと不安だ……。ネット依存の背景には、そんな心理もあるというのです。こう指摘されると、ひょっとしたら保護者のかたにも、思い当たる節はないでしょうか? 子どもならなおさらでしょう。とりわけ中学校や高校に進む13歳や16歳といった年齢で「つながり依存度」が高くなる傾向にあるということもわかりました。新しい環境で友達を作らなければならないということが、かえって心理的な圧迫になるというわけです。筑波大学の土井隆義教授は、「ネットの問題は(リアルな)人間関係の問題だ」と断言していました。それも「快楽」ではなく「不安」です。
同じ依存症といっても、ギャンブル依存やアルコール依存では快楽ホルモンである「ドーパミン」が分泌されることで依存状態が引き起こされます。ところが、ネット依存で分泌されるのはドーパミンではなく、不安に陥らせる「ノルアドレナリン」だといいます。仲間外れや一人でいることの恐怖が背景にあり、ネット依存が引き起こされるわけです。

土井教授は、機器の普及や価値観の違いなど、保護者の世代とは子どもを取り巻く環境が違っていることも指摘しています。保護者が思っている以上に不安に陥りがちになっているということに寄り添いながら、子どもを見守り、成長を促す必要があるのかもしれません。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • がんばっているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
まなびの手帳ロゴ ベネッセ教育情報サイト公式アプリ 教育情報まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

子育て・教育Q&A