重くなる私大の進学経費、その実態は……?‐渡辺敦司‐

今春にお子さんを大学に進学させた保護者のかたは、高い学費を払ってほっとしたのもつかの間、教科書代など入学後にかさむ経費に加え、自宅外生ではこれから毎月の仕送りが続くのか……とため息をついているころではないでしょうか。前年度の分ですが、最近相次いで発表された私立大学に関する調査からその実態を見ていくとともに、高騰する費用の理由を考えていきましょう。

重くなる私大の進学経費、その実態は……?‐渡辺敦司‐


文部科学省の学生納付金等調査(2013<平成25>年度入学者)によると、入学時に私立大学(学部)へ納める金額は131万2,526円。前年度より0.3%(3,356円)減とちょっぴり安くなりましたが、それでも相当な額です。しかもこれは全学部平均であり、文科系の114万9,246円(2012<平成24>年度比0.3%減)に対して理科系は149万6,044円(同0.3%増)、医歯系になると466万4,560円(同1.2%減)です。
都市部の大学の場合は、さらに大変です。東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連)は毎年、首都圏約20大学・短大(2013<平成25>年は15大学・短大)の保護者を対象に調査(外部のPDFにリンク)を実施していますが、2013(平成25)年度入学生で、受験から入学までにかかった費用(初年度納付金は文科省調査を利用)は自宅外生で210万5,226円(同0.1%減)でした。特に受験費用が3.8%(8,700円)増の23万9,400円となっているのが目立ちます。引っ越し時の出費が落ち着く6月以降の仕送り額は13年連続で減少し、20年前(1994<平成6>年)のピーク時より4万円近く少ない8万9,000円に。家賃(月6万900円)を除くと、1日937円で生活しなければならない計算です。
足りない分は当然アルバイトや奨学金で補わなければならず、奨学金希望者のうち申請者は65.4%と過去最高を更新しました。奨学金申請者を保護者の収入別に見ると年収700万円以下で70%を超えているだけでなく、1,000~1,300万円の世帯でも50%前後が申請しており、医歯系など高い学費に充てているものと見られます。

先ほど初年度納付金が少し安くなったというデータを紹介しましたが、減ったのは入学料や施設整備費で、授業料は705円とほんの少しですが上がっています。しかし、これを単なる変動差と見過ごすわけにはいかないようです。
今春入学生に関しては、有名私大での学費値上げが新聞などで話題になりました。消費増税といった特殊事情もあるのですが、早稲田大学の「全学グローバル教育費」(年間7万円)が象徴的でしょう。これからの大学はグローバル人材の育成をはじめ今まで以上に教育に力を入れなければならず、そのため今後も授業料を上げる大学が増えてくることが予想されます。

ただ「教育を充実させようとすればするほど、人件費は青天井」(大学関係者)であることも確かです。文科省は今春から無利子奨学金の対象者を拡大(外部のPDFにリンク)するとともに、有識者会議でも引き続き学生の経済的負担の軽減策について検討を続けていますが、給付型奨学金制度の創設や授業料減免の拡大など、充実がまだまだ必要なのは確かです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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