新指導要領で減る2学期制、増える小学校の教科担任制‐斎藤剛史‐

国語や理科などの授業時間数などを増やした新しい学習指導要領は、小学校が2011(平成23)年度、中学校が12(同24)年度から全面実施されています。基礎・基本となる学力を重視するとともに、思考力・判断力・表現力などの育成に重点を置いているのが特徴ですが、実際の学校現場は新しい指導要領でどのように変わったのでしょうか。文部科学省の2013(平成25)年度「公立小・中学校における教育課程の編成・実施状況調査」から主な変化を見てみたいと思います。

まず、実際の公立小中学校の授業時数の状況を見ると、指導要領が定めた標準授業時数どおりに授業時数を設定しているのは小・中学校全体の約3割で、他の約7割はそれよりも多く授業時数を設定しています。小学5年生を例に取ると、標準の年間総授業時数が980時間であるのに対して、実際の年間総授業時数は、「980」が29.6%、「981~1015」が19.2%、「1016~1050」が26.2%、「1051~1085」が11.5%、「1086~1120」が8.1%、「1121以上」が5.4%などでした。小・中学校は「週1時数」の授業が「年間35時数(小1のみ34時数)」に相当するので、公立小学校のうち45.4%が標準よりも週1~2時数以上、25.0%が実質的に週3時数以上多い時間割を組んでいることになります。多くの小・中学校で平日の子どもたちの時間割が、より過密になっていることがうかがえます。

また、非常勤講師の活用も含めて何らかの形で教科担任制を取っている小学校が増えています。小6を例に取ると、教科担任制を実施している学校の割合は、国語が3.8%(前回調査の2011<平成23>年度は4.5%)、社会が12.4%(同9.5%)、算数が4.1%(同4.1%)、理科が40.2%(同34.2%)、音楽が51.1%(同48.9%)、図画工作が19.1%(同17.2%)、家庭が29.6%(同27.4%)、体育が8.6%(同8.1%)、外国語活動が6.2%(同5.5%)でした。特に理科の教科担任制は、小4が24.3%(同20.3%)、小5が37.3%(同31.8%)となっており、小学校高学年では約4割の学校が教科担任制を導入していることが注目されます。
一方、前の学習指導要領では、始業式・終業式などの回数を減らして授業時数を増やせる2学期制に移行する小・中学校が増えていましたが、2013(平成25)年度に2学期制を実施したのは小学校が20.9%(同21.9%)、中学校が20.0%(同21.9%)で、いずれも低下しました。2学期制には学習評価の改善につながるメリットがある一方、前期の途中で夏休みが入る、評価(通知表)の回数が2回に減るといったやりにくさがあるのも事実です。新しい学習指導要領の実施に伴い、3学期制に戻した学校が出てきたようです。
この他、子どもの理解や習熟度に応じた指導をしている小学校は82.9%、中学校は78.9%に上っています。学習が遅れがちな子どもに対する補充的学習も小学校が65.8%、中学校が60.4%と6割以上の学校が実施しています。しかし、子どもの興味・関心や能力をさらに伸ばす発展的指導は小学校が35.1%、中学校が30.9%の実施にとどまりました。公立小・中学校における一つの課題といえるでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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