保護者の「負担感」から考える、子どものスポーツの習い事‐佐藤昭宏‐

「子どもの成長のために何かしらスポーツはやらせたい」と思っている保護者のかたも多いのではないでしょうか。ベネッセ教育総合研究所が全国の子どもを持つ母親を対象に実施した「第2回学校外教育活動に関する調査」(2013<平成25>年)によると、子どものスポーツの習い事を選ぶ時に重視されているのは、圧倒的に「子どもが楽しんでいる」ことです。
しかし、選ぶスポーツによって、保護者の負担感に差があるのも事実です。今回は、小学生にとってポピュラーなスポーツの習い事を、「保護者にとっての負担感」、具体的には「応援や手伝いなどの負担」と「金銭的な負担」の2つの観点で見ていきたいと思います。



応援などの負担が大きい集団スポーツ、費用の負担が大きい個人スポーツ

表1に挙げた種目は、同調査から、小学生が過去1年間に定期的にしている(していた)スポーツの上位10種目を抜き出したものです。併せて、その活動をしている小学生の比率、子どものスポーツに関する考えで「応援や手伝いなどの負担が重い」と答えた比率、1か月あたりの平均費用を示しています。


【表1 スポーツ活動ごとの母親の負担感、平均費用(小学生)】


(※1)「応援や手伝いなどの負担が重い」と答えた比率は、「とてもそう思う」と「ややそう思う」を足した値。
(※2)1か月の平均費用は、十の位で四捨五入している。


保護者の負担感が最も大きかったのは「硬式野球・軟式野球・ソフトボール」でした。そして「サッカー・フットサル」「バスケットボール」と続きます。これら3つは、ほかのスポーツと比べ費用の面では、比較的安いものが多くなっています。一方、負担感の小さいスポーツのトップ3は、「硬式テニス・ソフトテニス」「体操教室・運動遊び」「スイミング」でした。ただし費用の面では、高めのものが多くなっています。
 
ちなみに、上に挙げた10種目を「個人スポーツ」と「集団スポーツ」に分けて比較してみると(※3)、個人スポーツをしている子どもは約7割、集団スポーツをしている子どもは約3割でした。この区分けごとに負担感を見ると、応援や手伝いなどの負担が重いと答えた保護者は、集団スポーツで6割、一方の個人スポーツは4割強にとどまります。しかし月当たりの平均費用を見ると個人スポーツのほうが高く5,200円、集団スポーツは3,200円となっています。これらの数値はあくまで上位にランクインしている種目だけを対象にしたものですが、その中では保護者の応援や手伝いなどの負担感が小さいという点では個人スポーツ、費用の点では集団スポーツに分があると言えそうです。


(※3)活動率が上位の10種目のうち、「硬式野球・軟式野球・ソフトボール」「サッカー・フットサル」「バスケットボール」を「集団スポーツ」、「スイミング」「体操教室・運動遊び」「ダンス」「空手」「硬式テニス・ソフトテニス」「スキー・スノーボード」「陸上競技・マラソン」を「個人スポーツ」とし、数値を算出している。



子どもの成長を実感しやすいのは集団スポーツ

保護者にとって負担が大きいかどうかという観点は、現実問題として、習い事選びにおいて重要な要素ですが、スポーツ活動をとおして、我が子の身体的・精神的な成長を実感できることも重要な要素でしょう。ここでもう1つ、興味深いデータを紹介しておきます。子どものスポーツに関して、「運動やスポーツをとおして子どもが成長している」と回答した母親の比率を、個人スポーツと集団スポーツに分けて算出したところ、個人スポーツの57.4%に比べ、集団スポーツは68.9%と11.5ポイント高くなっていました(表2)。練習や試合を見に行く、スポーツの話をする機会も全体的に集団スポーツのほうが多いようです。集団スポーツのほうが、応援や手伝いの負担は大きいですが、その分、子どもの成長を見取る機会は得やすいのかもしれません。


【表2 個人・集団スポーツ別 親子の関わり】

(※4)数値は「ほとんどない」「年に1~2回」「年に数回」「月に1回」「月に1~2回」「週に1回」「週に2回以上」のうち、「ほとんどない」と回答した人の比率。


子どもにこれからスポーツの習い事をさせたいと思っているかた、今やっている習い事を続けていくかどうか迷っているというかたは、子どもの希望を尊重した上で、保護者として今後子どもやその活動にどう関わっていきたいのかを考えてみるものよさそうです。今回は「負担感」という観点で見ましたが、他の観点で見ると、個人スポーツと集団スポーツ、また異なるよさや特徴が見えてきます。それぞれの特徴を考慮し、選んだ種目に足りないところは意識的に補いながら、お子さまの成長を見守っていきたいですね。


プロフィール


佐藤昭宏

ベネッセ教育総合研究所・研究員。初等中等領域を中心に、子ども・保護者・教員の意識・行動の調査分析や、情報誌編集、教材開発等を担当。主な研究テーマは「『学び方』支援の在り方」、「消費社会下における子どもの自立・社会化」について。

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