給食費滞納の中に見る家庭の「貧困」-渡辺敦司-

文部科学省は先頃、「学校給食費の徴収状況に関する調査の結果」をまとめました。公立小・中学校の2%を抽出して、2012(平成24)年度の状況を調べたものです。未納者の割合は0.9%で前回調査の10(同22)年度(東日本大震災の被災3県を除く)に比べ0.1ポイント減少。未納額も給食費総額(調査対象校で約91億1,000万円)の0.5%(約4,500万円)と前回調査(約93億5,000万円のうち0.6%に当たる約5,200万円)より着実に減っており、全国で未納額は 4億円減ったと推計されます。払えるのに払わない人がきちんと払うようになったことは結構なのですが、あえて注目したいのは、払いたくても払えない人たちのことです。

未納の主な原因について学校の認識を尋ねると、最も多かったのは「保護者としての責任感や規範意識」(61.3%)ですが、「保護者の経済的な問題」も3校に1校(33.9%)を占めています。効果のあった対応方法(複数回答)を尋ねても、「就学援助制度等の活用を推奨」が19.9%と、5校に1校が回答しています。
ここから読み取れることは、確かに給食費滞納には「義務教育は無償なのだから払わなくてよいのでは」「家のローン返済が大変だから後回しにしても構わない」といったような身勝手な理由も数としては多いこと、しかしその一方では、就学援助をすすめなければいけないほど経済的に困っている家庭が一定程度は存在している、ということです。

同省の調査によると2012(平成24)年度、学校給食費の月額(外部のPDFにリンク)は小学校で約4,150円、中学校で約4,800円でした。月4~5,000円なら何とか払えるだろうと思いがちですが、それでも大変な家庭があるということに想像力を働かせる必要がありそうです。前回調査はリーマンショック(2008<平成20>年9月)後の世界的不況余波が続いていた時であり、それに比べれば「保護者の経済的な問題」(前回43.5%)や「就学援助制度等の活用を推奨」(同25.3%)は減っているのですが、だからといって問題が解消に向かっていると見るのは早計でしょう。
とりわけ今年4月から消費税率が5%から8%に上がるのに合わせて、給食費も値上げする自治体が多いようです。年々上がっていっている給食費が一気に跳ね上がることも予想されます。払える家庭にはしっかり払ってもらうことはもちろんですが、本当に払いたくても払えない家庭には何らかの措置を講じることも不可欠でしょう。

給食費滞納をきっかけに生活保護をすすめている実態が少なくないということは、給食費にも事欠くほど生活に困っていても、やはり生活保護だけは受けたくないという意識が強いことの表れでもあるのでしょう。以前紹介したとおり、2014(平成26)年度から高校で年収250万円未満程度の世帯に授業料以外にも教科書費や学用品費、PTA会費などを支給する「奨学給付金」制度がようやく創設される見通しです。家庭の経済格差が学力格差や進学格差に直結していることが明らかになっている今、子どもを不安なく学校に通わせる条件整備は最低限のインフラ(社会基盤)でありセーフティーネット(安全網)だと言ってよいでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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