文化系女子の体力に課題 中学生の約4分の1がまったく運動せず‐斎藤剛史‐

子どもたちの体力や運動能力の低下が大きな問題となっています。しかし中学生について見ると、運動する子どもとしない子どもに分かれる「運動習慣の二極化」という、もう一つの大きな課題があります。特に中学生女子にその傾向が顕著であることが文部科学省の調査でわかりました。中学校では運動部活動が体力づくりの中心となっていることが背景にあるようです。

全国の小学5年生と中学2年生の全員を対象に実施した2013(平成25)年度「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力テスト)の結果によると、50メートル走など8種目の合計点の平均は前年度をやや下回りました。ただし、2010、12(平成22、24)年度は2割の小中学校を対象にした調査だったため(2011<平成23>年度は実施せず)、原則としてすべての小中学校を対象にした今回の調査と比較すると、合計点の低下は「誤差の範囲内」だそうです。子どもたちの体力・運動能力は「ほぼ横ばい状態」と文科省は説明しています。

しかし質問紙調査の内容を見ると、気になる問題が浮かび上がってきました。子どもたちに体育の授業を除いた1週間の総運動時間を聞いたところ、「60分未満」と回答した者の割合は小5男子が9.1%、小5女子が21.0%、中2男子が9.7%、中2女子が29.9%でした。さらに、小5男女は1週間の総運動時間が「60分未満」をトップに運動時間が増えるほど割合が減っているのに対して、中2男女の総運動時間の割合は、「60分未満」と「1,000分」前後に多く集まっています。つまり中2の子どもたちは1週間のうち、ほとんど運動しない者と活発に運動する者とに二極化しているということになります。特に総運動時間が「60分未満」の中2女子のうち、運動時間が「0分」という者は80.2%に上っています。これは中2女子全体の23.5%、約4分の1の者が、学校の体育の授業を除けば「1週間のうちまったく運動していない」という計算になります。

この背景には、教育課程の中に部活動がない小学校では、休み時間や放課後なども使って積極的に体力向上に取り組んでいるのに対して、中学校の体力向上の取り組みが「運動部活動の充実」に偏っていることが挙げられます。実際、運動部やスポーツクラブに所属している者は中2男子が84.9%なのに対して、中2女子は59.9%にとどまっており、部活動に参加しない者、あるいは参加していても文化系部活動の者が多いためのようです。運動が嫌いという中2女子に、どうすれば運動をするようになるか聞いたところ(複数回答)、「好き・できそうな種目があれば」が74.4%、「友達と一緒にできたら」が50.9%、「自分のペースで運動ができたら」が44.8%、「体型の変化に効果があるなら」が30.5%などでした。

女子の運動習慣の二極化を解消するには、友達同士で好きなスポーツを楽しめる環境が重要なようです。特定の種目に全力を尽くす運動部活動は大切ですが、運動が嫌い・苦手という子どもたちを対象にした運動部活動の見直しも必要なのかもれしれません。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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