問われる力が変わるセンター試験 新課程で現役生が今から始めるべき対策とは?‐村山和生‐

昨年に続き、今年も多くの受験生に「難しい」と感じさせた2014(平成26)年のセンター試験。以前の記事では、いくつかの注目すべき科目を振り返りながら、先輩たちの苦戦理由をひもといてきました。その中で見えてきたのが、高1・高2段階で基礎的な学力をしっかりと身に付けておくことの重要性。そこで今回は、山を張ったり丸暗記をしたりするのではもはや太刀打ちできないこれからのセンター試験に、高1・高2生が今から備えておくべきポイントをお伝えします。



山を張るより、苦手分野を極力減らして

現・高校2年生(新3年生)が受験する2015年度のセンター試験では、数学と理科が先行して新学習指導要領に対応したものに切り替わります。具体的には、たとえば現行の「生物I」が「生物基礎」と「生物」に分かれ、文系のかたは主に「生物基礎」、理系のかたは主に「生物」を受験することになります(「物理I」「科学I」「地学I」についても同様の変更)。
今年のセンター試験でも、教科書中心に幅広い知識を問われたことで、特定の分野に山をはっていたり苦手な分野があったりした受験生は、非常に苦戦を強いられました。現段階の予測では、来年もまた全範囲からバランスのいい出題になると思われます。



暗記は大前提、これからは実践力が測られる

新学習指導要領で「言語活動の充実」がうたわれる中、今年のセンター試験の英語でも、実践的コミュニケーション能力を測ることを意識した問題が目立ちました。たとえば第3問で出たのは、「まとまりをよくするために取り除いたほうがよい一文を選ばせる」というものです。英文の主旨を把握する力に加えて、前後の文との関連性に着目できたかどうかがポイントです。
第4問はデータの読み取り問題でしたが、特に印象的だったのが、文章の内容をきちんと理解したうえで、最終パラグラフの内容を類推する問4です。求められたのは、文章を正しく読み解く力、論理性、文章の構成を把握する力。これまでも実践的なコミュニケーション能力を問う問題は出されましたが、今回の出題を通して、さらにその傾向が強くなってきたな、という印象を持ちました。
もちろん今後も、過去問などでは見たこともないような資料がポンと出るなど、さまざまな形での問われ方が出てくるはずです。また、実践的コミュニケーション能力を身に付けるためには、読む練習だけでなく、授業の中で行われる「書く」「話す」についても積極的に取り組んでいくこと。そして、序論・本論・結論がきれいに整った論文的な文章だけでなく、小説やエッセイ、新聞など、さまざまな形の文章にふれておく必要があります。今のうちから幅広い学習を行ってください。



センター試験の出題範囲の7割強が高1・高2で学んだこと。まずはこの1年間の復習を

今年のセンター試験の結果を受けてこれから対策を立てようと思うなら、今、いきなり今年の問題を解いても自信をなくすだけ。何しろ高3の受験生が解いて平均点があれほど低い問題なのですから、解けなくて当たり前です。それよりまずは、この1年間にやった小テストや中間考査、期末考査を年度末のこの機会にもう一度見直すことです。新しい学年に進級する前に振り返りをすることで、どの教科をしっかりやるべきか、その目標立てにも役立つと思います。
また、今の高1・高2生は教科書で扱う量が増え、授業のスピードも上がっているので、家でやらなければいけない課題の量も増えているはず。そのため宿題や課題の対応に追われて、復習の時間がとれていない人も多いことでしょう。少なくとも定期考査ごとには、しっかりと時間をとって復習するという意識を必ず持つようにしてください。



復習のポイントは、解答解説や別解を読み込むこと

また今後、小テストや定期考査、模擬試験のあとに、ぜひやってほしいのが解答・解説や別解を読み込むことです。できれば、解答・解説が付いているものは、その問題の正解・不正解にかかわらず、すべて確認してください。正解した問題でも実は別のアプローチがあることを発見できますし、何より読むだけで復習になります。「○が付いているからOK」ではなく、解くのに時間がかかった問題などは、学校の教科担任の先生に、もっと速く効率的に解く方法がないか質問してみるとよいでしょう。

今、さまざまな教育改革が行われる中で、皆さんに求められているのは「主体的な学習者」になることです。先生に言われたことだけでなく、自分で解答解説を読みもう一段理解を深め、先生にもう一問質問することを増やすなど、自分で「+α」の行動ができることを考えてみてください。学校での過ごし方、授業の活用のしかた、テストが返って来た時の行動を変えていくことで、未来の得点につながります。



速く正確に読む力

昔から、個別学力検査への対策が「質の訓練」だとすると、センター試験対策は「量の訓練」といわれています。たとえば今年の現代文(小説)は、素材文そのものはそれほど難しくはありませんでしたが、文章量はかなり多く、正しく読む力はもとより、速く正確に読む力も求められました。このように決められた時間の中で量をこなす試験の場合、ゆっくり時間をかければ解ける程度のあやふやな知識では得点を落としてしまいます。基礎をわかっているレベルではなく、しっかりと自分のものにする。徹底的に理解する基礎固めが、とても重要になってきます。そのためにも、高1・高2の段階で基礎をしっかり身に付け、高3になったら問題演習の中で速く解く力を養っていくようにしましょう。

Aに対してBという単純記憶だけではNG。どの教科でも、知識をその前後の関係性の中でどう理解しているかなど、より本質的な力が問われるようになっています。さまざまな素材にふれ、資料を読み、解答解説や別解を読み込み、自分が今まで気付かなかったようなアプローチや解き方がないか振り返る。これらをしっかり行うことが、今の高1・高2生が来年または再来年に受けるセンター試験での高得点につながると思います。


プロフィール


村山和生

ベネッセでは進研模試等を通した高等学校への進路指導支援、大学入試分析、進路説明会講師等を担当。2012年からはベネッセ教育総合研究所・高等教育研究室のシニアコンサルタントとして大学の教学改革支援や入試動向分析、「VIEW21大学版(現:Between)」編集長等を担当。16年からは「ベネッセ i-キャリア」にて大学生向けアセスメント分析や大学IRのための統合データベース開発などを担当。17年からは一般財団法人大学IR総研の調査研究部にて、研究員として高等教育全般の調査・研究と教学改革支援、ならびにIRの推進支援に携わる。
ベネッセコーポレーション帰任後は、学校支援事業の経営企画業務に従事。21年からベネッセ文教総研の主任研究員として、高等教育を中心に「学修成果の可視化」「IR」を主なテーマとして調査、研究、情報発信を続けている。

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