高校の「給付奨学金」創設 今後の拡大も課題‐渡辺敦司‐

高校授業料の無償化に所得制限を設ける法律改正が2013(平成25)年11月末に行われたことを受けて、12月末に閣議決定された2014(平成26)年度文部科学省予算案に所要経費が盛り込まれました。ここで注目されるのは、年収250万円未満程度の世帯の高校生に授業料以外の「奨学のための給付金」が創設されたことです。

民主党政権の目玉として2010(平成22)年度から導入された授業料無償化制度では、公立高校の授業料を不徴収とする一方、私立高校の場合は公立学校の授業料に相当する額を就学支援金として支給してきました。いずれにしても都道府県や学校を介して支給されるため、家庭と現金のやりとりをすることはありません。これを野党時代に「バラマキ」と批判してきた自民党の意向を受けて、下村博文文部科学相は2012(平成24)年12月の就任当初から、単なる無償化の廃止ではなく所得制限を設けると同時に、生み出された財源を公私間格差の解消のために使うとともに、低所得層に手厚い支援をしたい考えを表明していました。その後、公明党との与党協議で、対象世帯の年収を910万円未満とすることで合意しました。

法律改正により、国公私立を問わず年収が910万円程度(市町村民税所得割額が30万4,200円)未満の世帯には「就学支援金」を支給する制度に一本化されました。保護者と現金のやりとりをしないことは従来と同様です。対象となる世帯には、全日制高校の場合は月額9,900円を限度に支給され、さらに私立高校生には年収によって1.5倍(全日制で月額1万4,850円)~2.5倍(同2万4,750円)に加算することにしています。新たな制度の対象となるのは今春の入学生からで、在学生には今までどおりの制度が適用されますので、すぐに無償制が全面廃止となるわけではありません。

そして、もっと大きいのが高校の給付奨学金の創設です。生活保護受給世帯には国公立3万2,300円、私立5万2,600円を支給するとともに、第1子の高校生等がいる世帯には各3万7,400円・3万8,000円、23歳未満の被扶養者がいる世帯で第2子以降の高校生等がいる世帯には各12万9,700円・13万8,000円と加算することにしています。
これまでの公的な奨学金といえば、あくまで貸与制であって、当然、あとで返さなければなりません。就職に不安がある中、将来に返還が続けられるかが心配で利用を尻込みする家庭も少なくないと指摘されています。また、授業料の無償化は確かに世帯の負担軽減につながりますが、学校では授業料以外にも教科書代や教材費など多額の経費がかかるため、授業料無償化だけでは不十分だという意見も制度導入の当初から根強くありました。

返還しなくて済む給付奨学金制度が創設された意義は、強調してもし過ぎることはありません。しかし今回の財源は無償化の見直しによって生み出されたものであり、今後の対象拡大には新たな財源を見つける必要があります。さらには高校よりもっとお金のかかる大学などにも給付奨学金制度を創設することも、喫緊の課題と言えるでしょう。


プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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