前年並みに難しかった2014年センター試験から、高1・高2生が学ぶべきこと‐村山和生‐

2014(平成26)年1月18・19日に行われた大学入試センター試験。ICプレイヤーの不具合や、電車の遅れなど、一部の会場・地域でトラブルがありましたが、全体的には大きな混乱もなく安心して受験ができた年だったと思います。しかし一方で、問題の難易度には大きな波乱が。前年より平均点大幅ダウンの昨年に負けず劣らず、今年もかなり苦戦を強いられた受験生が多かったのです。先輩たちはなぜ、何に苦戦したのか? 今年のセンター試験を振り返りながら、高1・高2生の皆さんが、今心得ておくべきことをお伝えしていきます。



平均点が大幅に下がった前年並みの難しさで、安全志向に拍車

今年の平均点は、5教科7科目文系→532点(前年差+2点)、5教科7科目理系→568点(前年差+13点)<データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション/駿台予備学校)推計>。
この数字だけを見ると、昨年より平均点が上がって楽だったのでは? と思いがちですが、そうではありません。過去10年間の平均点の推移を見ても、昨年は下がりすぎといってよく、文系も理系も大幅に下がり、全体にかなり安全志向に傾いた年でした。そんな前年の平均点と、文系はほぼ同じ。つまり“今年も”難しかったというのが正しい解釈です。一方の理系は多少アップしていますが、過去のセンター試験の平均点と比較すると必ずしも高い水準ではありません。

また今年の受験生は、教育課程移行の境目であることなどを主な要因に、年度当初からずっと過度の安全志向が指摘されていました。そしてここにきて、ネットの速報などで「昨年より平均点が上がった」という情報だけを先に目にし、「平均点は上がっているのに自分はとれていない……」と落ち込み、元来の安全志向にさらなる拍車がかかっています。特に文系の受験生は難関大を避ける傾向が顕著です。しかし、ネットの記事だけで出来不出来を勝手に判断するのは危険です。高1・高2生にとってはまだ先の話ではありますが、試験後は必ず全国の集計結果を見てから、高校の先生としっかり相談をし、冷静に出願をしてほしいと思います。

それでは各教科の中で、特に注目しておくべきポイントを見ていきましょう。

平均点が5割を下回るという高い難易度

文系、理系を問わず、多くの受験生にとって「今年のセンター試験は難しかった」と最も感じさせた要因が「国語」です。平均点は数字上では前年差 -3点ですから、それほど変わらないだろうと思われるかもしれませんが、国語は昨年も非常に難しかったことで話題を集めた教科。それよりさらに平均点が下がり、200点満点で平均点が98点。相当しんどかったろうと思います。

特に難しかったのは、センター試験ではずいぶん久しぶりの『源氏物語』からの出題があった「古文」です。文章そのものもそうですが、特にせりふの話者が誰なのかが非常にわかりにくく、混乱した人が多かったのです。
古語の知識、用言や助動詞の理解などは大前提として、ここで求められたのは、文章の意図や流れを正しく把握しながら読めるかどうか。つまり、文章を正確に読み取る力に加えて、文章の構成・展開も把握しながら理解する力が問われました。これは、現代文や漢文でも同様です。

【理科】文系受験生を苦しめた「生物I」と「地学I」

まず「生物I」について。全体に難しく、特に「遺伝」は明らかに難しくなりました。ただ教科書中心の出題という点は今までのセンター試験と変わりませんし、とっぴな問題が出たわけではありません。ただし、データの処理など、解くのに時間がかかる問題が多かったので、「時間が足りなかった」という感想を持った受験生も多かったのではないでしょうか。また、観察・実験を題材とした問題も出題されましたが、「実験条件の理解を問う」という、目新しい問題でした。実験に対する深い理解は、新課程でも重視されると予測しています。

一方の「地学I」も教科書中心の出題でしたが、従来どおり幅広く正確な知識が求められました。今年は文章量が増加し、目新しい出題などもありました。そのため、過去問だけをやって山を張るようなスタイルの受験生にはちょっときつかったのかなと思います。センター試験は授業の全範囲が対象だということを、改めて確認できた出題だったと思います。

数I・A(前年差 +11.8点)や物理I(前年差 -1.7点)、化学I(前年差 +5.3点)で比較的点をとりやすかった理系が、国語での得点上のへこみをリカバーできたのに対し、生物や地学でも大打撃を受けた文系にはより大きく影響が強く出てしまった、という印象です。

【社会】資料を読み解く力が求められた「日本史B」

手塚治虫さんの漫画が登場したことでも話題の「日本史B」は、それ以外にも地図、写真、グラフなど多様な資料が使われており、「資料を読み解く力」が問われた内容でした。今後も、資料集や関連書籍などにも目を通し、図や統計資料などさまざまな素材にふれ、理解を深めていくことが、得点につながるでしょう。また、太平洋戦争の展開についての年代整序問題は、単純な年号の暗記では対応が難しかったのではないでしょうか。歴史上の物事を流れとして把握できていたかどうかが、高得点できるかどうかの分かれ目であったように思います。

新課程への切り替えを前に、新しい問われ方をされたり、新課程でより一層重視する項目が出題されたりしたのが、今年のセンター試験の大きな特徴です。ただし、問われ方が違うだけで、問われる内容の本質はそれほど変わりません。普段の授業にきっちり取り組み、理解を深めていれば、過去問にない問われ方をされたり、初見の資料が出てきたりしたとしても対処ができます。高1・高2段階の基礎的な学力を、どれだけしっかり身に付けられたかどうかで、1年後・2年後のセンター試験の得点に大きな差が生まれます。このことをしっかり認識して、日々の授業に臨んでください。この傾向は今後もますます強くなっていくはずです。

次回では、これからのセンター試験に備えて、高1・高2生が心得ておくべきポイントについてお伝えします。


プロフィール


村山和生

ベネッセでは進研模試等を通した高等学校への進路指導支援、大学入試分析、進路説明会講師等を担当。2012年からはベネッセ教育総合研究所・高等教育研究室のシニアコンサルタントとして大学の教学改革支援や入試動向分析、「VIEW21大学版(現:Between)」編集長等を担当。16年からは「ベネッセ i-キャリア」にて大学生向けアセスメント分析や大学IRのための統合データベース開発などを担当。17年からは一般財団法人大学IR総研の調査研究部にて、研究員として高等教育全般の調査・研究と教学改革支援、ならびにIRの推進支援に携わる。
ベネッセコーポレーション帰任後は、学校支援事業の経営企画業務に従事。21年からベネッセ文教総研の主任研究員として、高等教育を中心に「学修成果の可視化」「IR」を主なテーマとして調査、研究、情報発信を続けている。

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