学校では今 【第14回】「考える」習慣が学習意欲を高める-小泉和義-

「どうしたら、子どもが自分から勉強するようになるのか」今も昔も変わらない保護者の悩みです。今回は「考える」習慣が勉強に前向きに向かう契機になるという話をします。



学習意欲が低い日本の生徒

2012(平成24)年に実施された「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」の結果が公表されました。
この調査は世界65か国・地域の15歳を対象にした学力調査です。日本は65か国・地域のうちOECD加盟国の中で、読解力調査は1位、数学的リテラシーは2位、科学的リテラシーは1位など、非常に高い成績結果でした。
しかし、生徒質問紙調査の結果を見ると、日本の生徒は学習意欲が低く、また、「学習している内容が社会で役に立つ」という意識は、世界の平均と比べて低いことがわかりました。ベネッセ教育総合研究所で実施した調査結果からも、特に中高生の学習意欲に課題があることがわかります(図)。小学生のときの学習意欲を、中学校・高校でも持続するためには、いったいどうしたらよいのでしょうか。


【図 勉強の取り組み】

※「とてもそう」+「まあそう」の%
出典:ベネッセ教育総合研究所「第2回子ども生活実態基本調査」2009



言語活動を重視する学校の授業

今、学校現場では「言語活動」を重視した授業の工夫をし始めています。小学校では2011(平成23)年度から、中学校では2012(同24)年度から始まった新しい学習指導要領の中で、この「言語活動」が重視されていることも、その背景にあります。

なぜ「言語活動」を重視するのかを少し説明します。従来の授業は、先生が教科書をもとにして必要な知識や考え方を教え、子どもたちが先生の話をしっかり聞くことで理解するというものでした。そうした授業では、子ども自身の発言の機会や、子ども同士の話し合いの時間が少なく、また、ほかの人の発言をとおして自分で考える範囲も狭くなってしまいます。教師が教えることはもちろん大切ですが、それだけではなく、子ども自身が能動的に発言したり、多様な声をもとに思考したりする活動を取り入れることで、表現する力や思考する力を高めるだけでなく、子どもたちの学習に対する意欲を高めていくことが、「言語活動」を重視する狙いなのです。

小学校高学年になると、宿題の量が増え、覚えなければいけないことも増えます。先生から「覚えなさい」と言われれば、素直な子は先生の言うとおりに一生懸命に覚えます。しかし、そうした学習だけでは前向きな意欲形成にはつながりません。最近の学校現場を回っていて感じることは、先生方が、子どもに「言葉をとおして考えさせる」工夫をしていることです。先生方は「なぜそう思うのか?」「どうしたらできるのか?」など、授業の中でこまめに疑問を投げかけ、たとえ子どもが正解したとしても、すぐに先に進まずに立ち止まって考えさせるという点に工夫を凝らしています。一見効率が悪く見えますが、考えるクセがつくと、学びにも前向きに取り組めるようになるのではないかと思います。



「どうしてかな?」「どうすればよいかな?」

中学生になっても前向きに学ぶ姿勢を保つためには、家庭でも普段から「考えるクセ」を付けることが大切だと思います。

小学3年生の子どもがいる我が家では、「どうしてかな?」と「どうすればよいかな?」の2つの言葉を大きな紙に書き、壁に貼っています。「どうしてかな?」は起こった事実に対してその原因や理由を考える問いです。「どうすればよいかな?」は、次に自分がどう行動するのかを考える問いです。この2つの問いは、日常生活の中のさまざまな場面で活用することができ、我が家では子どもから質問攻めにあったりもしますが、親子の会話を豊かにするうえで、有効ではないかと思います。
あまり多用しすぎて、子どもを問い詰めてしまっては本末転倒ですから、ほめたり、うなずいたりしながら、上手に活用してほしいと思います。


プロフィール


小泉和義

ベネッセ教育総合研究所 主任研究員。全国の小学校、中学校、高等学校などの現場を取材し、子どもたちの実態や学校での指導課題を踏まえ、「今」と「これから」の教育に必要なことは何かを発信し続けている。

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