速報! 平成26年度都立高校入試 志望予定調査の状況と今後の見通し【後編】-浅野剛-

2014(平成26)年1月8日、平成26年度の都立高校志望予定調査結果が発表されました。推薦入試はまもなく発表となりますが、前編では、この調査結果の分析をもとに、志望者全体の動向と、進学指導重点校の志望傾向についてお伝えしました。後編では引き続き、進学重視型単位制高校、中高一貫教育校、専門学科の志望者の動向やその影響について解説します。

進学重視型単位制高校の動向 --グループ作成問題の影響?

新宿高校は、昨年(2013<平成25>年)春、東大現役2名をはじめ、国公立大学合格者数を堅調に伸ばしていることもあって、今年も多くの志望者数となっています。
墨田川高校は志望者数が減少し、一方で、周辺の上野高校などの志望者が増えています。推薦入試の枠が前年度の30%から20%に減った国分寺高校は、特に女子の志望者数が減っています。多摩地域は南多摩・北多摩・三鷹・武蔵などが中高一貫教育校となり、高校募集減または募集中止となったこともあって、近年は武蔵野北・小金井北など周辺の高校の志望者が多くなる傾向にあります。
また、このグループにおいては、初年度の難易度予測が難しいグループ作成問題への不安も影響しているようですが、入試問題・傾向が見えてくる来年度(2015<平成27>年度)以降は反動でまた増加することも予想されます。

中高一貫教育校の動向 --内部進学による募集減の影響あり

昨年度(2013年<平成25>年度>)からの動きになりますが、大泉高校・富士高校では、附属中学からの進学開始のため、高校からの募集が5クラスから2クラスへと大幅に減少。また、中等教育学校の南多摩・三鷹が募集中止となりました。2014(平成26)年度は、「併設型」(前編参照)の中高一貫教育校は、いずれも2クラス分の募集を行っており、昨年のような大幅募集減・募集中止はありませんが、高校からの入学者が少ないことに不安を感じる生徒が多かったためか、志望者は減少傾向にあるところが多く見られました。

大泉高校・富士高校は共に、男子の志望者が減っています。その影響もあり、昨年度は北園高校、今年度は文京高校、豊多摩高校(男子)など周辺の高校で志望者が大幅に増えています。
白鴎高校も志望者減少。地域的にも近く、特に理系の進学実績が好調の小松川高校で、志望者が大幅増となっています。
両国高校は男子減、女子増となりました。武蔵高校の志望者数はほぼ昨年並みです。



専門学科の動向

最後に、近年の志望者の増加が特に目立つ専門学科について述べます。
平成25年度より、進学指導特別推進校に指定された国際高校は、昨年2013年<平成25>年度>)より少し志望者が減少したものの、グローバル化の流れの中で志望者は多く、今年(2014<平成26>年)も厳しい競争になる可能性が高いと思われます。
多摩科学技術高校は、小金井に開校して5年目の新しい学校ですが、科学技術教育のための施設が充実しており、志望者数を伸ばし続けています。



全体を振り返って

前編でも述べましたが、都立高校の受験生からは、実に情報に敏感だという印象を受けます。進学実績が好調、カリキュラムに特色がある、施設が充実しているなどの情報をしっかりつかんだうえで、志望校を決定していることがよくわかります。グループ作成問題による志望者動向の変化も、受験生が情報に敏感ゆえ起こった現象でしょう。
毎年都内3会場での合同説明会、その他地区説明会、学校説明会、体験授業などのイベントを行ったり、学校ホームページを充実させたりなど、学校側も情報開示に努力しているため、受験生は情報が得やすいという環境もあります。
その一方で、進学実績などは変化するものであり、今まで注目されていなかった高校が、めきめきと実績を伸ばす場合もあります。また、校風や伝統など、情報の表面には表れない価値もあります。
都立高校はまさに変革のただ中にあり、今後もさまざまな動きが出てくるでしょう。
今後の受験生の皆さんには、情報はしっかりつかんだうえで、「なぜその高校に行きたいのか」という本質的な問いを忘れずに、志望校決定をしていただきたいと思います。


プロフィール


浅野剛

元大手進学塾高校入試担当部長、入試情報統括を歴任。30年以上にわたって受験指導を行い、多数の生徒を志望校に合格させてきた高校受験のエキスパート。現在は、中学生・保護者向けオンラインセミナーの講演をはじめ、中学校での進路講演なども担当。

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