変わる大学像、全入化・グローバル化が後押し‐斎藤剛史‐

高校生の2人に1人が4年制大学に進学するという実質的な「大学全入時代」の到来とそれに伴う大学教育の質の低下、グローバル化の進展による国際社会で競争できる大学の強化の必要性など、日本の大学教育は大きな転換点に立っています。そのような中で約780校に上る日本の大学は今後、どうなるのでしょうか。その答えの一つとして文部科学省が最近、方向を明確化しつつあるのが大学の「機能別分化」です。

日本には2013(平成25)年5月現在、782校(国立 86、公立 90、私立 606)の大学(大学院大学を含む)があります。30年前の1983(昭和58)年度は457校でした。これに対して、大学が多すぎるという意見がありますが、文科省は「日本の大学進学率は諸外国に比べて高いとは言えない」という立場を取っており、大学の数は多すぎるとはしていません。また、大学の倒産・廃校は学生や地域への影響が大きく、社会的に見ても好ましいことではありません。一方、現在ではグローバル化に対応した大学の教育力・研究力の充実は急務となっています。とはいえ、これだけ増えた大学全部をグローバル化に対応させることは実質的に困難でしょう。

そこで注目されるのが、それぞれの大学が異なる役割を果たす「機能別分化」という考え方です。これを最初に打ち出したのは2005(平成17)年の中央教育審議会答申で、

(1)世界的研究・教育拠点
(2)高度専門職業人養成
(3)幅広い職業人養成
(4)総合的教養教育
(5)特定の専門的分野(芸術、体育等)の教育・研究
(6)地域の生涯学習機会の拠点
(7)社会貢献機能(地域貢献、産学官連携、国際交流等)

という7タイプに大学を分けることを提言しました。

ここにきて文科省はこの考え方を大きく進めつつあるようです。政府が2013(平成25)年6月に定めた第2期教育振興基本計画の中に、「大学等の個性・特色の明確化とそれに基づく機能の強化(機能別分化)の推進」が基本施策として盛り込まれました。さらに文科省は、補助金などを重点的に配分する「私立大学等改革総合支援事業」をスタートさせ、私立大学367校(短大を含む)に対して、「大学教育質転換型」(建学の精神を生かした大学教育の質向上)、「地域特色型」(特色を発揮し、地域の発展を重層的に支える大学づくり)、「多様な連携型」(産業界など多様な主体、国内外の大学等と連携した教育研究)の3タイプに分類しました。
2013(平成25)年11月に発表された「国立大学改革プラン」でも、国立大学の機能強化として「世界最高の教育研究の展開拠点」「全国的な教育研究拠点」「地域活性化の中核的拠点」の3タイプを挙げ、大学内の予算や人員の配分を見直すよう求めていますが、これも国立大学の「機能分化」を促すのが狙いの一つと見られます。

国際的な研究や教育をリードする大学、教養教育に重点を置く大学、職業人養成、地域の生涯学習や地場産業との連携などを担う大学など、これから大学は「機能別分化」をキーワードにして大きく変わることになりそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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