公立学校の9割が避難所指定、でも「防災機能」は……‐斎藤剛史‐

2014(平成26)年の3月で東日本大震災から満3年を迎えます。復興にはいまだ遠い現状ではありますが、震災から多くのことを学んだのも事実です。避難所となる公立学校の防災機能の重要性を改めて知ったこともその一つでしょう。そのような中で国立教育政策研究所は、学校施設の防災機能に関する実態調査(2013‹平成25›年5月1日現在)の結果をまとめました。徐々に取り組みが進んでいるものの、まだまだ十分とは言えないのが実情のようです。

全国の公立学校のうち地方自治体により避難所に指定されている学校の割合は、小・中学校が95.2、高校が74.8%、特別支援学校が38.4%などとなっており、全体では91.5%に上っています。特に小・中学校は、そのほとんどが避難所に指定されており、まさに地域の防災拠点と言っても過言ではないでしょう。

一方、東日本大震災では長期にわたり学校が避難所となる中で、学校と自治体間の連携不足、住民用トイレなど施設・設備の整備、生活用水の確保など、単に災害発生時の避難住民受け入れにとどまらない、さまざまな課題も浮き彫りになりました。このため文部科学省は、避難所となるそれぞれの学校の役割を地方自治体の防災計画で明確にしたうえで、必要な整備を行うよう求めています。調査結果によると、防災計画などで防災担当部局と教育委員会の役割分担や連携を明確化しているのは、都道府県が68%(前年57%)、市区町村が66%(同59%)、学校を避難所とする際の施設利用計画を策定しているのは、都道府県が57%(同51%)、市区町村が43%(同37%)となっています。震災から3年を迎えつつあるにしては不十分と言わざるを得ないでしょう。
また、避難所に指定されている公立学校の防災関係施設・設備の整備状況を見ると、学校敷地内の防災倉庫・備蓄倉庫は41.7%(前年38.4%)、屋外利用トイレは69.1%(同67.5%)、体育館のトイレは80.5%(同79.8%)、災害時の通信装置は46.8%(同40.0%)、自家発電装置は34.2%(同27.5%)、飲料水のためのプールの浄水装置などは35.1%(同33.5%)、女性のプライバシーに配慮したスペースは41.8%(同34.0%)などとなっています。前年より整備率はアップしているものの、体育館のトイレや屋外用トイレなどを除けば、ほとんどの項目が5割を下回っています。

学校の防災機能の整備では文科省などが補助金を出しているものの、地方自治体の財政事情に左右される面が大きいようです。避難所指定の学校の防災施設・設備の整備状況を都道府県別に見ると、たとえば学校敷地内における備蓄倉庫などの整備率は、佐賀県の1.1%に対して東京都は97.1%に上るなど、予想される災害に関する地域の事情や地方自治体の意識なども大きく影響しているようです。災害への対応は地域により異なり一律に扱うことはできませんが、震災の教訓を風化させてはならないでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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