茂木健一郎先生(脳科学者)が語る、「読書が脳に与えるいい影響」とは【第4回】

前回に引き続き、脳科学者の茂木健一郎さんに読書と脳科学の関係について伺いました。今回は、読書嫌いな子どものために保護者ができることを教えていただきます。

課題に夢中で取り組む素地は、読書がつくる

「うちの子は文章力がなくて……」という話をよく聞きます。それは多くの場合、本をたくさん読んでいないことが原因だと思いますね。
文章を書くのが苦手な子どもを見ると、「何も書くことがない」「何も思いつかない」と滞っている。僕は毎週締め切りを抱えていて、4,000字の原稿なら1時間くらいで書くんですよ。そんなとき、脳のパフォーマンスが最高に上がっている「フロー」という状態になります。フローというのは、作業が流れるように進み、「時間の経過を忘れている」「我を忘れている」「やっていること自体がうれしい」のが特徴。この状態を経験することが、読書するときにも、文章を書くときにも、しゃべるときにも大事なんです。フローという現象が実際に起こるということを知っていただきたいですね。
ただ、課題と自分のスキル(能力)が一致しないと、フローにはなりません。たとえば「環境問題について書いてください」という課題があるとします。その場合、環境問題について知識がある、環境問題について考えたことがあるなど、ある程度スキルがないとだめですね。だから、読書は大事なんです。マルコム・グラッドウェルという人が「1万時間の法則」ということを言っていて、どんな分野でも1万時間練習するとプロになれるそうです。読書でいうと、一日3時間読んで10年かかる。かなり大変ですが、1万時間を目安に本を読んでいただきたい。古典からからエンターテインメントまで、マンガから活字まで、ありとあらゆる本を読むのがよいと思います。それが結局、知性の幅、スペクトラム(連続体)になっていくのです。



好きな分野の本を読書のきっかけに

読書嫌いの子どもに読書の喜びに目覚めてもらうには、読書が楽しいことだとわからせないといけません。それには、子どもが何かに興味を持ったときがチャンス。恐竜が好きになったら恐竜の本、ロボットが好きになったらロボットの本というように、そのとき興味のあるジャンルの本を与えてあげてください。文字の少ない図鑑でもいいんです。最初は視覚から入るほうが、子どもの脳にとってはわかりやすいので。そのうちに文章のほうが面白いことに気付いて、そこで楽しさを味わって火がつけば、あとは勝手に燃えてくれます(笑)。小学生向けにおすすめの本を3冊選ぶとすれば、『だれも知らない小さな国』『大きい1年生と小さな2年生』『赤毛のアン』がいいですね。きっと読書の楽しさを味わえると思いますよ。

それから、見落としがちなんですが、保護者が本を読まないとだめです。自分が読んでいないのに子どもに読めと言っても無理ですよね。保護者がふだんから読んでいる姿を見せる、あるいは家に保護者の本棚があることが大事。僕も小学校高学年くらいのときに、父親の本棚から選んで経済書などを読んでいました。家の本棚に本が少ししかなかったら、豊かな読書体験のきっかけがそれだけ減ってしまいます。

また、幼少期に読み聞かせするときも大事で、登場人物の気持ちに寄り添って保護者のかたが語りかけをするといいと言われています。たとえば桃太郎の話でも、「このとき桃太郎ってどういう気持ちだと思う?」などと問いかけてみてください。子どもの中で、他人の気持ちを推測する回路の働きが強くなるので、おすすめですよ。



【小学生向け 茂木健一郎先生おすすめの3冊】

『だれも知らない小さな国』
<講談社/佐藤 さとる(著)、村上 勉(絵)/651円=税込>

『大きい1年生と小さな2年生』
<偕成社/古田足日(著)、中山正美(絵)/1,050円=税込>

『赤毛のアン─赤毛のアン・シリーズ1─』
<新潮社/ルーシー・モード・モンゴメリ(著)、村岡花子(訳)/704円=税込>

『脳を鍛える読書のしかた。』
<マガジンハウス/茂木健一郎(著)/840円=税込>


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プロフィール



脳科学者。東京大学卒業、同大学院修了後、ケンブリッジ大学を経て、現在ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京工業大学大学院連携教授。専門の脳科学、認知科学を生かして各種メディアで活躍。著書に『脳とクオリア』(日経サイエンス社)など。

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