法科大学院、避けられない大再編 補助金見直しで統合推進‐斎藤剛史

「日本版ロースクール」として鳴り物入りで創設された法科大学院の抜本的な再編が始まることになりそうです。文部科学省は、法科大学院に対する補助金制度を大幅に見直し、評価の低い法科大学院については今後2年以内に評価上位の法科大学院と統合しなければ補助金の交付を廃止することにしました。統合できず補助金を廃止された大学院は実質的に廃校に追い込まれることになります。

現在の司法試験は、原則として法科大学院を修了していないと受験できません。その法科大学院は2004(平成16)年度の創設当初、修了者の7割程度が司法試験に合格できると想定されていたため、大変な人気を集めました。しかし、大きな誤算が二つ起こりました。一つは、法科大学院の数が増えすぎたこと。もう一つは、弁護士需要の増加を見越して年間3,000人を司法試験で合格させるという政府の計画が、法曹関係者らの強い反対で実現できず、司法試験に合格できない法科大学院修了者が大量に出現したことです。このため法科大学院の志願倍率は、国公私立合わせて2004(平成16)年度は13.0倍だったものが、2013(同25)年度は3.3倍まで落ち込んでいます。また、法科大学院の約9割が定員割れという状態です。

既に1校が閉鎖し、現在73校ある法科大学院のうち7校が学生の募集停止を実施または予定していますが、まだまだ多すぎると政府は判断しました。このため文科省は、2015(平成27)年度から法科大学院への補助金(国立大は交付金)制度を見直すことにしました。具体的には、
(1)司法試験合格率
(2)法学部出身者以外の学生の司法試験合格率
(3)入学定員充足率
(4)法学部出身者以外の学生や社会人の入学者数
(5)地域事情(同一都道府県内に法科大学院が何校あるか)と夜間開講しているかどうか
……という5項目で点数評価し、評価の高い順から第1、第2A、第2B、第2C、第3の5グループに分けて、順に補助金を減額します。そのうえで先導的な教育プログラムを組んでいる、就職支援に取り組んでいるなどの法科大学院には、補助金を加算するというのが新しい仕組みです。
特に第3グループに分類された法科大学院は、同一都道府県内にほかに法科大学院がないなどの場合を除いて、2015(平成27)年度までに第1か第2A・B・Cのグループの法科大学院と統合しないと、2016(同28)年度から補助金がゼロとなります。実際には、評価の低い第3グループの法科大学院が上位グループの法科大学院と統合交渉をするのは、極めて困難であると見られることから、2014(平成26)年度から法科大学院の学生募集の停止、実質的な廃校の決定を下すところが出てくることが予想されます。

法科大学院の再編は不可欠ですが、政府や文科省の見通しの甘さが現在の事態を招いたことも否定できません。文科省には、統廃合など在籍学生が不利にならないような配慮や、今後の法曹志望者に無用な心配をかけないよう法科大学院の全体像を明確に示す責任があると言えるでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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