コミュニティーサイトに潜む危険、スマホでの被害も増加‐斎藤剛史‐

パソコンから携帯電話(ケータイ)、さらにスマートフォン(スマホ)へと子どもたちをめぐる情報環境は、大人たちの想像を越えた速さで変化しています。それに伴って子どもたちが犯罪の被害者になるケースも増加しています。警察庁がまとめた2013(平成25)年上半期(1~6月)の「コミュニティサイトに起因する児童被害の事犯に係る調査結果」(外部のPDFにリンク)では、スマホを利用して犯罪被害に遭った子どもたちが増加していることがわかりました。

警察庁の調べによると、2013(平成25)年上半期にいわゆる「出会い系サイト」とは異なる一般のコミュニティーサイトに絡んだ事件で、性犯罪などの被害者となった18歳未満の子どもは598人と前年同期より89人増加しています。被害者の子どもたちへの聞き取りによると、当該サイトを利用した理由は「無料だから」52.8%、「友達のすすめ」23.2.%など、そのサイトに対するイメージは「友達・メル友を探すサイト」38.7%、「コミュニティサイト」29.6%などでした。気軽さでコミュニティーサイトに参加していることがうかがえます。被疑者と直接会った理由は、「遊ぶため」20.0%、「相談に応じてくれる人、優しい人だから」17.7%、「お金・品物を得るため」17.1%などで、初対面の人間に会う警戒心が薄いのが特徴です。
一方、検挙された被疑者664人に対する調べによると、子どもたちとの接触目的は「児童との性交目的」が76.8%と約8割を占めていました。考えたくはないことですが、ほとんどの被疑者は、最初から子どもたちを狙うつもりでいるというのが現実なのです。被害者となった子どもを選んだ理由は、「メールの返信が来たから」22.6%、「性交できそうだったから」22.1%、「児童だったから」20.2%、「すぐに会えそうだったから」9.0%などでした。知らない人に実際に会う行為は大きな危険性を伴っていることがわかります。
子どもたちの当該サイトへのアクセス手段は、「携帯電話(スマホを含む)」が533件(89.1%)でした。特にスマホは274件で、2012(平成24)年下半期の122件に比べて約2.2倍にも増えています。18歳未満が利用する携帯電話やスマホには、フィルタリングを提供することが販売業者に義務付けられていますが、子どもたちの84.6%が保護者と一緒にスマホなどを買っているにもかかわらず、95.0%がフィルタリングに加入していませんでした。フィルタリングをすると人気アプリが使えないこともあるため、実際には子どもに頼まれフィルタリングをつけない保護者も少なくないようです。また、最近ではLINE(無料通話アプリ)のID検索機能を18歳未満の子どもが使えないようにできる機種もありますが、被害に遭った子どもたちの携帯電話やスマホで本人名義だったのは21.3%で、残りは保護者名義などでした。せっかくの防犯機能も保護者が仕組みを十分に知っていなければ、役に立たない可能性もあります。

スマホなどの普及により、子どもたちが犯罪に遭う可能性がより高まっていることを保護者や教育関係者はよく理解しておくべきでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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